研究課題の中心である「温和な反応条件下でのアンモニア合成反応の開発」について大きな研究進展が見られた。 窒素架橋2核モリブデン窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応において、これまで用いてきたPNP型ピンサー配位子の代わりにカルベンを含む新しいPCP型ピンサー配位子に用いた窒素架橋二核モリブデン窒素錯体を触媒として利用することで大きな触媒活性の向上に成功した。常温常圧下での窒素ガスとの反応で2核モリブデン窒素錯体あたり最高230当量のアンモニア生成が達成された。一方、アンモニア等価体であるシリルアミン生成反応で、アミド配位子を持つバナジウム錯体に代表される単純で入手容易なバナジウム錯体が有効な触媒として働くことを見出した。常温常圧下での窒素ガスとの反応でバナジウムあたり最高20当量以上のシリルアミン生成が達成された。本反応は、バナジウム錯体が触媒的窒素固定能を有することを示した世界初の例である。
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