研究実績の概要 |
本研究は、これまでに研究代表者が進めてきた、中心金属と機能性配位子との協働作用に基づいた脱水素化触媒の開発とその活用に関する研究について、格段に発展させることを目的として遂行している。 本年度は最初に、電子供与能が極めて高いことが知られる含窒素複素環カルベンと、α-ヒドロキシピリジン骨格とを連結した新しいキレート構造の機能性配位子を得ること成功した。さらに、この配位子を有する新規イリジウム錯体を合成し、その構造をスペクトルデータ解析ならびに単結晶X線構造解析によって明らかにした。 次に、脱水素化錯体触媒の中心金属として従来用いてきたイリジウムに代わり、8族遷移金属のルテニウムを有する新規錯体を合成した。このとき、機能性配位子として6,6'-ジヒドロキシ-2,2'-ビピリジンならびに6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジンを有する一連のルテニウム錯体を得ることに成功した。 続いて、イリジウムおよびルテニウム錯体触媒を用い、アルコールを原料とする脱水素的変換反応について調査した。その結果、(1)機能性含窒素複素環カルベン配位子を有するイリジウム錯体触媒を用いることにより、アルコールの水溶媒中での脱水素的酸化によってカルボニル化合物を得る反応が、(2)機能性6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることにより、第二級アルコールの脱水素的酸化によってケトンを得る反応が、そして(3)機能性6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン配位子を有するイリジウム錯体触媒を用いることにより、ジオールの分子内脱水素的環化によってラクトンを得る反応が、それぞれ高効率的に達成された。
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