研究課題/領域番号 |
26288050
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小澤 文幸 京都大学, 化学研究所, 教授 (40134837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 合成化学 / 遷移金属錯体 / ノンイノセント配位子 / ホスファアルケン配位子 |
研究実績の概要 |
1. 触媒量の白金錯体の存在下,2,6-ビス(ホスファエテニル)ピリジン(BPEP)から,ピリジンの2位と6位にホスホラニルメチル基とホスファエテニル基をそれぞれ有する非対称PNPピンサー型ホスファアルケン配位子(PPEP)を合成し,遊離の配位子として単離することに成功した.また,その生成機構について実験と理論を組み合わせて検討するとともに,合成したPPEPを用いてルテニウムおよびロジウム錯体を合成し,それらの結晶構造と化学的性質を明らかにした. 2. 脱芳香族化ピリジン骨格を有する非対称PNP型ホスファアルケン(PPEP*)を配位子とする[K(18-crown-6)][Ir(NH2)(PPEP*)]を合成し,この錯体を用いて二分子のアセトニトリルのC-H結合を連続的に活性化切断できることを見出した.重水素化ラベル実験により,この反応ではまずIr-NH2結合とのメタセシス反応により一分子目のアセトニトリルが活性化され,続いてIr-PPEP*による金属-配位子協同作用によって二分子目のアセトニトリルの活性化が起こることを示した.また,単結晶X線構造解析により,極めて電子豊富なアニオン性錯体であるK[Ir(CH2CN)2(PPEP*)]がホスファアルケンの強い電子受容性によって効果的に安定化される様子を明らかにした. 3. [K(18-crown-6)][IrCl(PPEP*)]錯体が,常温常圧の条件下,CO2のヒドロシリル化反応に従来になく高い触媒活性を示すことを見出した.また,反応生成物であるギ酸シリルと種々のアミンとの反応により対応するホルムアミド誘導体を高収率で合成できることを示した.さらに,反応系にPhSiH3を添加することにより,触媒を追加することなくホルムアミドをN-メチルアミンに変換できることを示した. 4. 剛直な縮環構造をもつRind基をホスファアルケンの立体保護基とする新規PNPピンサー型非対称配位子Rind-PPEPを合成し,ロジウムおよびイリジウム錯体に導入,それらの結晶構造を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非対称PNPピンサー型ホスファアルケン配位子の触媒的合成法を見出し、新たな置換基の導入による配位子の安定化法を開発した.また,脱芳香族化ピリジン骨格を有するホスファアルケン配位錯体を用いてC-H結合活性化に成功し,常温常圧下におけるCO2の高効率変換触媒の開発にも成功した.本研究は,当初の計画通り,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,26年度に開発した非対称PNPピンサー型ホスファアルケン配位子を用いてN-H結合やC-H結合等の不活性結合の活性化に取り組む.また,ケイ素-水素結合やケイ素-ホウ素結合の触媒的活性化反応の可能性を追求し、それらを用いて不活性小分子を有機化合物に導入する高効率触媒反応の開発に取り組む。本研究は順調に進展しており,研究計画に変更の必要はない.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に開発した錯体に高い有用性が認められ,それらの反応研究に当初の予想を超えた消耗品費が必要であると見込まれるため,平成27年度に物品費の一部を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分は,ガラス器具や薬品等の消耗品費に充当する.
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