研究実績の概要 |
1. リン原子上にEind基とMes*基を有する非対称PNPピンサー型ホスファアルケン配位子(Eind-BPEP)を開発した.Eind-BPEP配位子をもつロジウムおよびイリジウム錯体はMes*P=CH基でのみC-H付加環化を起こして[MCl(Eind-PPEP)]錯体(M = Rh, Ir)に変換され,さらにKN(SiMe3)2との反応により脱芳香族化ピンサー錯体 K[M(Cl)(Eind-PPEP*)]に誘導化された.両者はほぼ同一の幾何構造をもつが,アンモニアとの反応において,ロジウム錯体では配位子交換によりアンミン錯体 K[M(NH3)(Eind-PPEP*)]が,一方イリジウム錯体ではN-H結合切断を伴ってアミド錯体 K[M(NH2)(Eind-PPEP)]が生成した.DFT計算をもとに,金属の違いによるこれらの反応の違いは,アンミン錯体とアミド錯体との熱力学的安定性の違いに反映したものと推定された.
2. K[M(Cl)(Eind-PPEP*)](M = Rh, Ir)を触媒とし,CO2のヒドロシリル化反応が常温常圧で効率的に進行した.また,K[Ir(Cl)(PPEP*)]を触媒としてCF3SiMe3によるCO2のカルボシリル化反応が進行することを見出した.反応生成物であるCF3CO2SiMe3の捕捉剤としてN-メチルアニリンを用いることにより,CF3CON(Me)Phが83%の収率で得られた.さらに,NCSiMe3とCO2との反応も進行した.
3. [Ir(L)(PPEP*)](L = Cl-, CO, t-BuNC, PMe3, PPh3)を触媒としてアルコールによるアミンの脱水縮合型アルキル化反応が進行した.反応は中性条件で進行し,LがtBuNCの場合にN-アルキル化アミンが,LがPPh3の場合にその脱水素体であるイミンが優先的に生成した.触媒反応中間体モデルを用いて,Lの種類によって反応選択性が大きく変化する理由を調べた.
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