研究実績の概要 |
1. 脱芳香族化ピリジン骨格を有する[K(18-c-6)][Ir(Cl)(PPEP*)](1)を触媒とするCO2のヒドロシリル化反応ついて触媒反応機構を検討した.まず,錯体(1)とHSiMe2Phとの化学量論的反応について検討し,ヒドロシランの酸化的付加体である[Ir(SiMe2Ph)(Cl)(PPEP*)](2)が[K(18-c-6)]Clの脱離を伴い,定量的に生成することを見出した.しかし,錯体(2)はCO2に対して反応性を示さず,錯体単独で触媒反応は進行しなかった.一方,錯体(2)に[K(18-c-6)]Clを添加すると,錯体(1)の場合と同等の触媒活性が発現した.そこで,錯体(1)とヒドロシラン(HSiMe3)との反応についてDFT計算を用いて検討し,金属-配位子協同作用により,PPEP*のベンジル位にシリル基が付加した[K(18-c-6)][Ir(H)(Cl)(PPEP-SiMe3)](3)が20.2 kcal/molの活性化自由エネルギーで生成することを見出した.錯体(3)とCO2との反応では,まずCO2に対するヒドリド配位子の求核攻撃により[Ir(Cl)(PPEP-SiMe3)]と[K(18-c-6)][HCO2]が8.4 kcal/molの活性化自由エネルギーで生成し,続いて[HCO2]がPPEP-SiMe3配位子を外圏から攻撃し,HCO2SiMe3と錯体(1)が14.6 kcal/molの活性化自由エネルギーで生成した. 2. ホスファアルケンの立体保護基(Ar)がEind基とMes*基である[Cu(BPEP)]X錯体(X = OTF, PF6)を合成し,錯体の構造と反応性に及ぼすAr基の影響を調べた.その結果,剛直な縮環構造をもつEind基により,カチオン性の3配位T字形錯体が安定化され,CO2のヒドロシリル化反応に高い触媒活性が発現することが分かった.
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