研究課題/領域番号 |
26288056
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
芹澤 武 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (30284904)
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研究分担者 |
澤田 敏樹 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20581078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セルロース / ナノシート / 加水分解活性 |
研究実績の概要 |
II型の結晶構造をもつセルロースナノシート(CNS)を既報(M. Hiraishi et al., Carbohydrate Res. 2009, 344, 2468)に従って酵素合成した。酵素として、加リン酸分解酵素であるセロデキストリンホスホリラーゼを用い、既報(M. Krishnareddy et al., J. Appl. Glycosci. 2002, 49, 1)を参考にしながら大腸菌で発現させ、His-tag精製の後、GPCにより精製した。SDS-PAGEにより、高純度のセロデキストリンホスホリラーゼの調製を確認した。 500 mMのHEPES緩衝液(pH 7.5)を使用し、60℃下、モノマーであるα-グルコース-1-リン酸(200 mM)とプライマーであるグルコース(50 mM)の混合水溶液に酵素(0.2 U/ml)を添加し、3日間反応させた。生成したCNSを遠心分離操作により沈殿させ、上清を純水に置換する操作を繰り返すことにより精製した。NaOD/D2Oを溶媒とする1H-NMRスペクトルにより、平均重合度10のセルロースの生成を確認した。セルロースの生成は質量スペクトルからも確認でき、また、重合度も質量スペクトルとよく一致した。透過型電子顕微鏡観察により、幅数100ナノメートル、長さ数マイクロメートルのシート状セルロースであることを明らかにした。赤外吸収スペクトルにより、得られたセルロースはII型の結晶構造を有することが分かった。 p-ニトロフェニル基で活性化されたアミド、リン酸、エステル基をもつ低分子モデル基質を用いて、合成したCNSが示す加水分解活性を評価した。基質の高濃度溶液を準備し、ごく少量をCNS分散液に添加し、反応させた。所定の反応時間後、遠心分離操作によりCNSを沈澱させ、上清中の生成物(p-ニトロアニリンやp-ニトロフェノール)を可視紫外吸収スペクトル装置により検出した。その結果、CNSはモデルエステル基質に対して加水分解活性を示すものの、その活性は低く、また、アミドおよびリン酸基質の加水分解は加速しないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロースの合成に用いる酵素の調製や、引き続くセルロースナノシートの合成に成功し、研究室内で安定に供給できるシステムを確立した。さまざまな低分子モデル基質を用いて、得られたセルロースが示す加水分解活性が評価できており、おおむね予定通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
セルロースナノシートは低分子のモデルエステル基質を加水分解するものの、その活性は低く、他の基質に展開するためには、加水分解活性の向上が必要不可欠であることが明らかになった。そこで次年度は、セルロースナノシートが示す加水分解活性を向上することから研究を開始することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の後半に、セルロースナノシートが示す加水分解活性についてさまざまなな基質を用いて網羅的に評価することを予定していたが、セルロースナノシートの活性が予想外に低かったため、セルロースの調製や、基質の合成あるいは購入のための費用が当初計画よりも少なくなり、結果として次年度使用額を生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の計画に示した通り、セルロースナノシートの活性向上を実現するために、当面はセルロースナノシートを大量調製する可能性があり、その際の費用として、また、引き続き、さまざまなな基質を用いて加水分解活性を網羅的に評価することを予定しており、その費用として使用する予定である。
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