平成28年度は、これまでに得られた知見をもとに、力学的刺激に対して次世代型反応性高分子の創製を目指すとともに、動作原理の解明および普遍的な分子設計の提案を目的として研究を推進した。 具体的には、ジアリールビベンゾフラノン(DABBF)骨格を有する力学応答性高分子に関して、DABBF骨格以外の分子鎖の分子量、トポロジー、ガラス転移温度の違いによる影響を系統的に調査した。その結果、例えばポリスチレンを用いた場合では、分子量が大きくなるほど力学応答性が高くなることが明らかとなった。また、分子鎖のトポロジーに注目すると、直鎖状の高分子よりも、星型高分子の方が高い力学応答性を示すことがわかった。さらに、ガラス転移温度の違いにより、力学応答性が大きく異なることを見出した。これは分子鎖の運動性が大きく影響しているものと考えられる。架橋高分子においても、架橋密度の違いによって力学応答性が異なることが明確になり、DABBFを用いた力学応答性高分子の分子設計指針を提案することができた。 実際の実験は、本研究経費により購入した自動粉砕装置等を活用して高分子粉末に力学的な刺激を与え、電子スピン共鳴(ESR)測定により、発生したラジカル種の定性と定量を行った。ESR測定の結果、期待どおり炭素ラジカル由来のシグナルが観測され、定量化にも成功した。ラジカル種由来の色の変化を、紫外可視吸収測定のみならず、写真撮影、ムービー撮影、などを活用して多角的に評価することができた。この他にも、分子鎖が可逆的に切断・再結合する多くの反応性高分子の合成と評価を行った。 平成28年度は、最終年度であったため、研究全体の総括も行った。
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