研究課題/領域番号 |
26288064
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大塚 英典 東京理科大学, 理学部, 教授 (00344193)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 異種金属複合ナノ粒子 / 触媒活性 / 自己会合性高分子ミセル / 活性酸素消去能 / 酸化還元反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、オリジナルに設計した両親媒性ブロック共重合体が形成するミセルのコアに局在した金属配位部位を反応場とした、異種金属複合ナノ粒子の定量的合成法の確立、及びこれまでにない高い触媒活性効果を達成することを目的とする。昨年度までに、両親媒性高分子Poly(ethylene glycol)-block-dipicolylamine (PEG-b-DPA(:bis(2-pyridyl methyl)amine)) が金属配位部位DPA をコアとした80 nm の会合体を形成し、Pt 錯体は還元生成する1-2 nm の単分散Pt ナノ粒子の鋳型かつ分散剤となる事を見出した。生成したPtナノ粒子の酸化還元活性はDPA分子とPt ナノ粒子の相互作用による高い酸化還元活性の向上が特定された。 本手法は、ミセルへの金属イオンの局所濃縮と還元反応を分離できるため、反応する金属元素濃度を規定可能な新規金属ナノ粒子の合成法である。つまり、ミセル内金属元素数が制御された反応場での金属ナノ粒子合成が可能と考えられる。本年度はPEG-b-DPAミセル内の定量的な金属イオン還元性を特定するため、Pt 錯体化率の異なるPEG-b-DPA-Pt を用い、ミセル内元素濃度を規定したPt ナノ粒子担持ミセルの合成方法の検討、および機能評価を推進した。その結果、DPA ユニットの錯体化率が異なるPEG-b-PDPA-Pt(X)(X = 14, 53, 77, 100) の合成を確認し、PEG-b-PDPA-Pt(X) ミセルを作製した後、Pt ナノ粒子担持ミセルの作製に成功した。ICP測定より、錯体化率に比例したミセル内部での定量的Pt イオン還元が確認された。4-nitrophenol 還元反応をプローブとした触媒活性能を評価した結果、反応速度定数は錯体化率 (X)の増加に伴って比例的に向上したことから、触媒機能も制御可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目的に対して、それぞれの結果をまとめると、 高分子ミセル内に配位した金属元素数が制御された反応場での金属ナノ粒子合成について当初の予定を達成した。ミセル内元素濃度を錯体化率を制御することによって規定することに成功し、さらにPt ナノ粒子担持ミセルの合成方法および触媒機能を特定出来た。還元反応における触媒活性能を評価した結果、反応速度定数は錯体化率の増加に伴って比例的に向上したことから、触媒機能も制御可能であることを明らかとした。 さらに進めて、ミセル内での金属コロイド状態についてSTEM解析および元素マッピングを行った。その結果、異種金属複合ナノ粒子はコアシェル構造性を示唆する知見も得られたため、当初の予定を凌駕する進展が得られたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度までの知見をさらに発展させ、複合金属ナノコロイドの精密合成とその機能評価を行う。同時に合成した金属ナノコロイドのさらなる還元機能向上を目指し、両親媒性ブロック共重合体の構造改変についても検討を行う。以上の最適化の結果、得られた金属ナノコロイドの主要な機能性として、ROS消去特性を物理化学的、生化学的反応の両面から定量的に評価し、より実用現場に近い系での応用性を検討する。つまり、スーパーオキシド生成酵素系であるxanthine oxidaseと基質であるhypoxanthineをヒドロキシルアミン体に添加し、観測されるニトロキシドのESRスペクトルを測定する。スーパーオキシドによりヒドロキシルアミンが酸化されて形成するニトロキシド生成系に、スーパーオキシドスカベンジャーであるSODを添加し、ESR信号の減衰を確認するとともに、この系をコントロールとする。合成したナノ粒子を同様に添加し、ESR信号の減衰を確認しSODとの比較によってその効率を定量規格化する。以上、得られる結果を取りまとめ、論文発表および学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験遂行に必要分の材料を購入した場合の残高であり、微調整を行わずにそのまま来年度使用すること、としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
化学試薬等の消耗品として使用する。
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