研究実績の概要 |
本課題で取り組む金属ナノ粒子合成法は、高分子ミセル内部への金属イオンの局所濃縮と還元反応を分離できるため、還元する金属元素濃度を定量的に制御可能な新規合成法であることを実証した。実際、H27年度までに、Pt錯体化率(X %)の異なるPEG-b-DPA-Pt(X = 14, 53, 77, 100 %))を用いた、ミセル内Ptイオン濃度の制御とナノ粒子化に成功した。 本年度はPEG5k-b-DPA-Pt錯体ミセルを鋳型としたナノ粒子の合成について、さらに詳細な解析を行った。Ptイオン還元前後におけるPEG5k-b-DPA-Ptミセルの粒径・多分散指数・会合数には大きな変化が確認されなかったことから、ミセル内部での還元反応の進行が示唆された。実際、TEM 観察では、PEG5k-b-DPA-Ptミセル内に分散担持された1-2 nm のPtナノ粒子が確認できた。ICP 測定から定量した還元後のミセル内Pt濃度は、錯体化率の増加とともに上昇した。これは、PEG5k-b-DPA-Pt の錯体化率制御に基づいて、ミセル内金属元素数を定量的に制御可能であること示しており、ミセル内Ptイオン濃度に依存したナノ粒子形成に成功した。 得られたPEG5k-b-DPA-Pt(還元粒子化後)の活性酸素(O2・- )の消去活性を評価した結果、消去能はPVP-Pt(還元粒子) より高く、生体内酵素SODと同様の活性が示された。また、錯体化率の増加に伴うSOD活性の向上が確認された。さらに、この活性を基にPEG-b-DPA-Pt(還元粒子化後) によるAgイオンの自動還元を行い、Pt-Ag 複合ナノ粒子を合成した。Pt-Ag 複合ナノ粒子はその相乗効果により、特に優れたSOD活性を示した。以上、PEG-b-DPAは複合金属ナノ粒子の定量合成や抗酸化剤としての応用に期待できる有用高分子であることが分かった。
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