研究課題/領域番号 |
26288066
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡會 仁 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 招へい教授 (30091771)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気化学効果 / 磁気光学効果 / 磁気泳動法 / 界面磁気分析 / 微粒子磁気分析 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績について、以下に述べる。 1)インスリンが液液界面においてアミロイドを形成しやすいことを独自に実験的に見いだしていたが、その実験結果を再度検証し、論文として公表した。 2)磁気円二色性(MCD)スペクトルを利用すると、シリカゲルプレート上に生成したプロトン付加型のテトラフェニルポルフィリンのJ-会合体が測定できることを見出した。そして、キラルな2-アルキルアルコールが共存するときは、そのキラリティーを反映したJ-会合体の誘起CDスペクトルが得られることを発見した。このように、MCDスペクトルを用いる新しいキラル認識法を開発した。 3)磁性ナノ粒子の分散状態を測定する方法として、磁気線二色性(MLD)の測定が有用であることを見出した。すなわち、これまでほとんど測定されることのなかった400 nm以下の紫外部のMLDスペクトルは、磁性ナノ粒子のブラウン回転運動を反映し、その強度は印加される磁場の強度とナノ粒子の束縛状況に依存するため、ナノ粒子と共存するイオンや分子との相互作用の程度を感度良く反映した。この発見は、分析化学的に極めて重要であり、磁性ナノ粒子を分析試薬として用いる新たな分析法が可能であることを示した。 4)自動ステージによる永久磁石と試料セルとの距離を変化させる機能を取り込んだ横磁気カー効果測定装置を自作した。ガラスプリズムと薄層ガラスセルに挟まれた磁性ナノ粒子分散液の反射強度を、磁場の強度を変えて測定した。その結果、p偏光とs偏光を導入したときに、反射光強度の磁場依存性は符号が逆の変化を示した。これは、プローブ光が薄層試料を透過しさらに低面で反射した光を測定したためであることがわかった。この方法により、磁気線二色性を感度良く測定できることを発見した。 5)金表面で起こるプラズモン発光の磁場依存性を実験的に見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポルフィリンを用いるキラル分子の認識法がシリカゲルプレートに直接利用できることを示し、さらに磁気円二色スペクトルを測定することにより、誘起CDスペクトルを高い信頼性で規格化できることを発見した。 磁性ナノ粒子分散液の紫外部の磁気線二色性スペクトルが、ナノ粒子と他のイオンや分子との結合状態を高感度で反映することを初めて発見した。この発見は、分析化学的に極めて重要である。 横磁気カー効果の測定装置を製作し、薄層液体試料の磁気複屈折が高感度で測定できることを示した。この方法は、磁性ナノ粒子とさまざまなイオン・分子との相互作用を、磁性ナノ粒子の回転拡散の束縛効果から評価できることを示しており、様々な相互作用への応用が期待できる。 金薄膜表面におけるプラズモン共鳴蛍光が、磁場の強度に依存することを初めて公表した。
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今後の研究の推進方策 |
1.新規な磁気化学効果の開拓については、磁性ナノ粒子の磁気化学効果を中心に研究する予定である。 2.磁気プラズモン共鳴の研究においては、温度の影響をさらに詳しく検討する。 3.磁性ナノ粒子の磁気線二色性の研究においては、その分析化学的応用をより広く検討する。 4.磁気泳動を利用する分離法の開拓においては、希土類錯体の磁気分離を中心に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
磁性ナノ粒子の磁気光学効果を測定する必要があり、試料に磁場を印加する方法をいろいろと検討した。様々な試行錯誤を繰り返しているが、まだ、最適の方法が見出されていないため、利用する光学部品および電子部品の購入に時間を必要とした。
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次年度使用額の使用計画 |
磁場の印加方法として、静磁場を電磁石で発生する方法と永久磁石で発生する方法を比較検討する。また、磁性ナノ粒子の磁気緩和時間の測定のため、電磁石と永久磁石の方法を比較検討する。次年度使用額はそのための物品の購入に使用する。
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