平成31年度(令和元年度)の研究実績の概要を以下に述べる。 1)磁気泳動の分析化学的展開では、磁気泳動モル比法を溶媒抽出系に応用するためのに、単一液滴の磁気泳動速度の解析から金属イオンの抽出量を求める方法を検討した。 2)表面をCOOHで修飾した磁性酸化鉄ナノ粒子(MNPs)分散水溶液の磁気光学効果の分析化学的利用を目指して、以下の研究を行った。①磁気サニャック効果の観測装置を用いて、MNPs分散溶液がその濃度に比例した磁気複屈折を生じることを確認し、その磁場依存性をLangevin式を用いて解析した。陽イオン性界面活性剤を加えたときのMNPsの凝集と、更に高濃度の界面活性剤の添加による再分散が明確に検出された。この研究は、Bull.Chem.Soc.Jpnに公表された。②MNPs分散水溶液が明瞭な磁気配向線二色性(MOLD)スペクトルを示し、MNPsの分散状態を高感度に反映することを明らかにした。この溶液に鉄(III)イオンを添加した際の凝集反応と、過剰の鉄(III)イオンの添加による再分散過程を、MOLDスペクトルの大きさと極大波長の長波長シフトにより検出できることを明らかにした。磁気配向状態のままでUV硬化樹脂中に固定化されたMNPsのLDスペクトルの測定から、MNPsの磁気容易軸とLDの遷移モーメントが同方向であることを確認した。Anal.Sci.に公表された論文は、Hot Articleに選定された。③ガラスプリズムとMNPs分散水溶液の界面での偏光反射光強度における磁場効果について、セルの厚さの影響、s偏光、p偏光の影響、陽イオン性界面活性剤の影響等について調べた。界面反射光強度が磁場に大きく依存し、その依存性はLangevin式により解析された。界面活性剤の添加によりガラス表面への吸着が増加した。この研究の論文はJ.Mag.Mag.Mat.誌に掲載された。
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