研究課題/領域番号 |
26288068
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原田 明 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90222231)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超高感度分離検出 / 非蛍光性化学種 / 紫外レーザー分光 / 光熱変換 / ヘテロダイン検出 / 超高速液体クロマトグラフィー / 2色2光子励起 / 顕微イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、重要性が高く微量な生体・環境関連の溶液中化学種を、無修飾のままで単一分子検出レベルの高感度で検出できる手法の適用範囲を広げるための技術革新を期したものである。これら化学種の多くは紫外域にのみ光吸収を持ち、かつ、非蛍光性(低蛍光量子収率)である。このため、単一分子検出の従来法である蛍光法は、ラベル化操作無しでは全くの無力である。そこで、非蛍光性化学種の無標識・超高感度検出法として申請者らが開発してきた深紫外励起・多色増幅型光熱変換計測法を発展させた普及型装置の試作と合わせて、多色多光子吸収を利用した深紫外吸収帯の励起の実現等を図り、汎用性・高感度性・化学種選択性を併せ持つ非蛍光性化学種の無標識・超高感度検出技術の革新を図った。 次の4つを柱に研究を遂行し、成果は逐次発表する。(Ⅰ)213nm励起光熱変換効果ヘテロダイン干渉検出系装置開発と性能評価。(Ⅱ)2色2光子励起光熱変換効果の原理的検証と装置化。(Ⅲ)ミクロ液体クロマトグラフィーとの結合による超高感度分離検出の検証。(Ⅳ) 顕微イメージングとの結合による表面ナノ粒子分散系への適用性能の実証。最重要課題である(Ⅰ)の装置開発のポイントは次の5つである。(1)汎用性維持のための213nm全固体レーザー励起、(2)屈折率変化高精度計測のためのヘテロダイン干渉計、(3)溶媒混合の早いミクロ流路系を用いたミクロHPLC、(4)親水性相互作用クロマトグラフィー分離モード、(5)流速・流量を考慮して設計した顕微光学系と試料セル部。 4年計画の3年目に当たる本年度は、昨年度までの(Ⅰ)および(Ⅲ)の結果と成果とに基づいて(Ⅲ)を中心に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究実績の概要で述べた4つの柱(Ⅰ)~(Ⅳ)を課題として研究を遂行している。最重要課題である(Ⅰ)に関しては、昨年度までに装置を完成して(Ⅲ)の検討に着手しており、成果が得られ始めていた。本年度、それら成果を積み重ねつつ、新たに浮上した課題の解決を図った。(Ⅰ)では、(1)~(5)の5つの観点を設定している。検討する中で、最大の課題は(3)、(5)に関わり、主にミクロHPLCの長期間不安定性に起因する問題であると結論した。解決のために、新規に昨超高速液体クロマトグラフィーを別途導入し、分離条件の検討を進めて、より優れた成果を得ることに成功している。これらの成果は、まとめて、公表した。 当初計画に加えて、別方式の光熱変換検出法である熱レンズ法との感度比較も検討している。その中で、検出限界を悪くする主要因がバックグラウンド信号レベルに有ると結論するとともに、バックグランド信号レベルがセル形状や光学系配置に強く依存することを確認し、最適化を試みた。特に、バックルラウンド信号の抑制と検出効率最適化のために、マイクロチップタイプのシースフローセルへの適用の検討にも着手している。 (Ⅱ)と(Ⅳ)に関しては、昨年度までに一応の結果が得られ、問題点を整理して解決策法を探ってきている。本年度、特記すべき進展は特になかった。
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今後の研究の推進方策 |
213nm励起光熱変換効果ヘテロダイン干渉検出系と超高速液体クロマトグラフィーとを接続した装置を用いて、生態関連アミノ酸(20種類)、5種類の核酸塩基、および多環芳香族塩素化物、ニトロ化物の幾つかについての分離条件の最適化を進めており、継続する。ヘテロダイン検出系と熱レンズ検出系とを併用してセル形状に対する感度、バックグランド信号レベルの検討も継続するが、特に有望と推測できるマイクロチップタイプのシースフローセルの利用を検討する。セルを最適化した後、検出限界を求め、昨年度に引き続き以下の検討を進める。即ち、検出限界の目標を、溶液系で濃度検出限界<1nM、吸光度検出限界<10のマイナス7乗、絶対量検出限界~サブヨクトモルとする。また、無標識での単一分子カウンティングの実証が目標の一つであるが、検出感度が分子カウンティングレベルに達しなかった場合には、それぞれの試料系で、網羅的に測定を行って検出限界を整理し報告する。特に、検出感度が単一分子カウンティングレベルに近い化合物を見いだした場合には、励起光照射光学系部分に、試料溶液に増幅光を同時照射できるように改良を加えて測定を行い、多色増幅効果を用いた分子カウンティングのデモンストレーションを行う。また、分離検出条件としては、界面活性剤添加系での分離検出も試みるなど、最高性能の分離検出条件と求めての挑戦を行い、成果を整理してまとめ、公表する。
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