本研究は、重要性が高く微量な生体・環境関連の溶液中化学種を、無修飾のままで単一分子検出レベルの高感度で検出できる手法の適用範囲を広げるための技術革新を期したものである。これら化学種の多くは紫外域にのみ光吸収を持ち、かつ、非蛍光性(低蛍光量子収率)である。このため、単一分子検出の従来法である蛍光法は、ラベル化操作無しでは全くの無力である。そこで、非蛍光性化学種の無標識・超高感度検出法として申請者らが開発してきた深紫外励起・多色増幅型光熱変換計測法を発展させた普及型装置の試作と合わせて、多色多光子吸収を利用した深紫外吸収帯の励起の実現等を図り、汎用性・高感度性・化学種選択性を併せ持つ非蛍光性化学種の無標識・超高感度検出技術の革新を図った。 次の4つを柱に研究を遂行し、成果は逐次発表する。(Ⅰ)213nm励起光熱変換効果ヘテロダイン干渉検出系装置開発と性能評価。(Ⅱ)2色2光子励起光熱変換効果の原理的検証と装置化。(Ⅲ)ミクロ液体クロマトグラフィーとの結合による超高感度分離検出の検証。(Ⅳ) 顕微イメージングとの結合による表面ナノ粒子分散系への適用性能の実証。最重要課題である(Ⅰ)の装置開発のポイントは次の5つである。(1)汎用性維持のための213nm全固体レーザー励起、(2)屈折率変化高精度計測のためのヘテロダイン干渉計、(3)溶媒混合の早いミクロ流路系を用いたミクロHPLC、(4)親水性相互作用クロマトグラフィー分離モード、(5)流速・流量を考慮して設計した顕微光学系と試料セル部。 4年計画の最終年度に当たる本年度は、昨年度までの(Ⅰ)および(Ⅲ)の結果と成果とに基づいて(Ⅲ)を中心に検討するとともに、(Ⅱ)に関しての装置を設計した。また、マイクロチップ流路系への適用を試みた。
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