研究課題/領域番号 |
26288073
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
山口 敏男 福岡大学, 理学部, 教授 (70158111)
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研究分担者 |
栗崎 敏 福岡大学, 理学部, 准教授 (20268973)
石坂 昌司 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80311520)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エアロゾル / 液体構造 / 水和イオン / X線回折 / X線自由電子レーザー / ポリキャピラリーレンズ / 液体水 |
研究実績の概要 |
1.数十マイクロメートルサイズの液滴のX線回折測定用にポリキャピラリーレンズを製作した。実験室のX線回折装置に装着して強度を観測した結果、目的の強度増は得られなかった。今後は低エミッタンスで強力なシンクロトロン放射光を用いて性能試験を行う。 2.連続液滴発生装置とX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた液滴X線回折法を製作した。100ミクロンの水滴の2次元データを得た。1次元データに変換するプログラムを作成して得た結果は文献値を再現した。液滴発生装置で発生した液滴をXFELで照射する装置と手順は確立した。今回用いたXFELの波長は1.24 オングストローム(A)であり、測定可能な散乱ベクトルの最大値は2.6 (1/A)となり、Empirical Potential Structure Refinementモデリングには不十分であった。より低波長のXFELを持ちいた測定を必要とする。 3.常温における水、5.2 mol/L硫酸アンモニウム水溶液、3.5 mol/L塩化ナトリウム水溶液のX線回折測定を行った。水、硫酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオンの水和構造を明らかにした。液体水中では、水分子が四面体構造を取ることがわかった。また、塩化物イオンの第一配位殻には3.15 Aに6個の水分子が結合している。また、ナトリウムイオンの第一配位殻には2.35 Aに6個の水分子が結合している。硫酸イオンの周りには約8個の水分子が存在することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に予定していたレーザー補足法による単一液滴の浮遊装置の製作ができなかった。この原因は、既設のイメージングプレート迅速X線回折装置の試料部の寸法に制約があり、当初予定していたレーザー光を入力する顕微鏡装置が組み込めなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
1.単一液滴X線回折装置に製作: レーザー補足法による単一液滴の浮遊装置を製作する。液滴のサイズは最大30ミクロンとする。液滴の温度は、液体窒素を通過して冷却した乾燥窒素ガスを試料セル中に送入することにより、室温から-100℃まで制御する。昨年度に購入したポリキャピラリーレンズとイメージングプレートX線回折装置に組み込み、単一液滴X線回折装置を製作する。 2.単一液滴X線回折装置のコミュッショニングと性能評価:液滴試料として、水、塩化ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を選び、単一液滴浮遊装置を用いて、液滴サイズと液滴温度の校正を行う。溶質濃度は0.1 mol/Lから飽和濃度とする。水の液滴のX線散乱強度とバルクの値を比較して、ポリキャピラリーレンズの性能を評価する。更に、各水溶液の液滴のX線散乱測定を行い、バルクの値と比較検討する。EPSRモデリングにより、液滴とバルク溶液の構造の違いを検討する。 3.自由電子レーザーを用いた微小液滴X線散乱装置の製作:(1)で開発した冷却試料セルをSACLAに搬入する。連続液滴発生装置と組み合わせて、-100℃までの20ミクロンの液滴のX線散乱測定ができる装置を製作する。 4.連続液滴発生X線散乱装置のコミュッショニングと性能評価: 波長0.78 Å、カメラ長50 mm、検出器サイズ110 mmで測定する。水、塩化ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液の液滴のX線散乱測定を行う。得られた構造因子を基に、二体ポテンシャルを改良してEPSRモデリングにより、液滴の三次元構造を決定する。実験室系で得られた液滴の構造、およびバルクの構造と比較検討することにより、液滴構造のサイズ依存性を明らかにする。
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