研究課題/領域番号 |
26288077
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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研究分担者 |
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光クロスリンク / 19F NMR |
研究実績の概要 |
19F NMRのケミカルシフト変化による核酸検出法は、生体バックグラウンドが皆無で、信号の生体組織透過性が高いことから、in vivoなど夾雑試料中での核酸検出法として注目されている。しかし既存の核酸研修プローブではケミカルシフトの変化幅が小さく(0.5 ppm程度)、B/F分離が困難であった。そこで、既存のプローブよりも大きなケミカルシフト変化を誘起する核酸検出プローブの開発を目的としている。 平成26年度は超高速DNA光クロスリンク反応による2重鎖形成依存的な化学構造の変化に着目し、配列依存的な光反応に伴う反応部位の炭素の電子軌道の変化(Sp2→Sp3)により、既存のプローブよりも大きなケミカルシフト変化が誘起できるかどうか検討を行った。実験に用いた反応は2重鎖DNA中の決まった位置のピリミジン塩基と光反応性ヌクレオシドとの[2+2]光環化によるシクロブタン環形成により引き起こされるものであり、これによりピリミジン塩基の5位の炭素が、Sp2炭素からSp3炭素に変換されることになる。この原理を応用すれば、ケミカルシフトの変化幅が格段に大きい核酸検出プローブの開発が可能であると考えた。そこで5トリフルオロチミジンを標的架橋ピリミジンとして用い実際に366 nmの光照射を行ったところ、光架橋により8 ppmのケミカルシフト変化が見られ、既存の核酸検出プローブの約16倍のケミカルシフト変化を示した。 またDNA結合小分子にフッ素を埋め込んだ人工小分子を設計・合成しそれを用いることで配列選択的なイメージングが可能であることも実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
5トリフルオロチミジンを標的架橋ピリミジンとして用い実際に366 nmの光照射を行ったところ、光架橋により8 ppmのケミカルシフト変化が見られ、既存の核酸検出プローブの約16倍のケミカルシフト変化を示した。現時点で世界最高のシフト幅を実現できているものと考えられ、in vivoなど夾雑試料中での核酸検出に向けて重要な反応開発に成功していると考えられる。またDNA結合小分子にフッ素を埋め込んだ人工小分子を設計・合成しそれを用いることで配列選択的なイメージングが可能であることも実証できており、これらも併せて当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度開発した二つの反応系、①光架橋により8 ppmのケミカルシフト変化を誘起できる光クロスリンクを用いた核酸検出系、②フッ素を埋め込んだ人工核酸結合小分子を用いた配列選択的イメージング系、これらについて、様々な反応系(配列、周辺環境、濃度)について反応解析を行いながら、ケミカルシフト誘起の機構、配列選択的なDNA結合に関する分子機構を明らかにする。またこれらの機構に基づいて分子開発、核酸検出に関するシステム開発を行い、例えば8 ppmのケミカルシフト変化を誘起できる光クロスリンクを用いた核酸検出であれば実際にナノメートルオーダーのマイクロRNAを夾雑物の中から検出できるか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
光架橋反応を組み込んだNMR解析の際に19Fを核種としている為、測定により多くのODNが必要と思っていたが、予想以上の感度が良く、当初の計画よりオリゴ核酸を大量に必要としなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度開発に成功した光架橋により8 ppmのケミカルシフト変化を誘起できる光クロスリンクを用いた核酸検出系を用いて、実際にナノメートルオーダーのマイクロRNAを夾雑物の中から検出できるか検討を行う予定であり、高価なマイクロRNAの調達に使用予定である。
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