研究課題/領域番号 |
26288080
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
廣田 俊 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90283457)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 超分子化学 / 生体分子 / ナノバイオ / 多量体 / 立体構造 |
研究実績の概要 |
ウマシトクロムc(cyt c)はエタノールで処理すると、C末端領域のαへリックスを分子間で交換してドメインスワッピングする。本研究では、高イオン濃度下、ウマcyt cを高タンパク質濃度で酸性モルテングロビュール状態から中性状態へフォールディングさせると、多量体が形成することを見出した。得られた2量体は、C末端αヘリックスをプロトマー間で交換し、これまでに報告した2量体と同じドメインスワップ構造を有していた。125 mM ClO4-を含む酸性溶液中のcyt cモルテングロビュール状態では、cyt c分子の約25%がお互いに相互作用し、凝集していることがX線小角散乱測定により示唆された。一方、cyt cを125 mM ClO4-を含む酸性モルテングロビュール状態から中性状態へフォールディングさせると、cyt c分子の約11%がドメインスワップ2量体として得られた。これらの結果は、cyt cのモルテングロビュール状態での凝集体が一定の割合でドメインスワップ多量体に折れ畳まることを示しており、ドメインスワップした多量体を形成するための相互作用はモルテングロビュール状態で既に存在することが示唆された。 ミオグロビン(Mb)がアルコール添加により分子間で同じ構造領域をドメインスワッピングして二量体を形成することを利用し、Mbの分子表面を精密設計することにより、異なる2つのヘム活性部位を有する人工Mb二量体を作製することに初めて成功した。さらに、Mb 2量体の一酸化炭素結合挙動を明らかにした。Mbの単量体と2量体で、活性部位構造が類似していても、タンパク質構造の変化により一酸化炭素の結合特性が異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウマシトクロムc、緑膿菌由来シトクロムc551、超好熱菌由来シトクロムc555、ミオグロビンなどのドメインスワッピングに関連する論文が国際学術雑誌に8報掲載された。ミオグロビンのヘテロダイマー作製に関する研究成果は、ドイツの総合化学誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、他のタンパク質の多量体形成や細胞内でのドメインスワッピング、シトクロムcとリポソームの相互作用について調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
オープンアクセス誌のPLoS ONEへの掲載決定が2015年2月25日にあり、その掲載料が4月以降になった。また、2015年3月26日に届いたProtein Science誌への掲載料のinvoiceの金額が間違っており、正しい金額でのinvoiceの再発行を出版者に要求したため、Protein Science誌への掲載料の支払いも翌年度になってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
PLoS ONE誌及びProtein Science誌への掲載料に用いる。
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