研究課題
ウマシトクロム(cyt) cのドメインスワップ2量体および3量体では、メチオニン(Met)80がヘム鉄から解離する。そこで、cyt cのドメインスワッピングにおけるMet80のヘム鉄配位の役割を調べるため、Met80をアラニンに置換したヒトM80A cyt cを作製した。M80A cyt cの単量体および2量体は野生型 cyt cの単量体および2量体と類似した2次構造を有することがCDスペクトルから示唆された。M80A cyt c 2量体の示差走査熱量曲線には、野生型cyt c 2量体と同様、単量体への解離による負のピークが観測された。M80A cyt c 2量体の解離温度は61℃で野生型cyt c 2量体と同じ温度であったが、エンタルピー変化は-14 kcal/molであり、野生型cyt c 2量体の値(-30 kcal/mol)に比べて絶対値が小さかった。この結果より、野生型 cyt cでは、2量体の解離後Met80はヘム鉄に配位し、単量体が安定化することが推測された。2量体の解離速度のアイリングプロットから2量体解離に伴う活性化エンタルピー変化を求めたところ、野生型とM80A cyt cでそれぞれ120±10と110±10 kcal/molと同程度であり、Met80が2量体の安定性へ及ぼす影響は小さいことが示唆された。以上の結果より、cyt cのヘム軸配位子であるMet80は単量体の安定性に寄与するが、2量体の安定性への影響は小さいことが判明した。また、Allochromatium vinosum 由来シトクロムc′(AVCP)のドメインスワップ2量体を作製し、ドメインスワップ2量体1つと単量体2つから構成されるAVCP 4量体の立体構造を明らかにした。これらの知見はドメインスワッピングによるタンパク質の超分子化の理解と利用に役立つ。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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