研究課題
3本鎖DNA結合蛋白質のN末端領域1-113アミノ酸が、3本鎖DNAとの結合に必要な3本鎖DNA結合ドメイン(TBD)であることを、筆者は既に明らかにしている。本年度は、まず1本鎖DNAが分子内で折り畳まって分子内3本鎖DNAが形成されることを円偏光二色性スペクトルで確認した。次に、この分子内3本鎖DNAとTBDの結合の熱力学的特性を等温滴定型熱量計で解析した。結合時の結合比は1であり、分子内3本鎖DNAとTBDは1:1で結合した。結合時の解離定数は10の-5乗Mであった。2本鎖DNAとこの塩基配列を特異的に認識して結合する2本鎖DNA結合ドメインとの結合の結合定数と比較して、分子内3本鎖DNAとTBDの結合の結合定数は小さかった。これより、TBDは分子内3本鎖DNAに配列非特異的に結合すると考えられる。TBDが3本鎖DNAの塩基配列よりも3本鎖DNAの形状を認識して結合するという、ゲルシフト法で明らかにした従来の知見と一致する知見が得られた。また、結合時のエントロピー変化が負の値であった。2本鎖DNA結合ドメインが2本鎖DNAに特異的に結合する際には、脱水和に基づく正の値のエントロピー変化が観測されることが知られている。これと比較して、TBDが分子内3本鎖DNAに結合する際のエントロピー変化は小さかった。TBDが分子内3本鎖DNAに結合する際には脱水和に基づく正の値のエントロピー変化の寄与に加えて、天然変性領域であるTBDが分子内3本鎖DNAに結合する際に折り畳まり、この構造変化に基づく負のエントロピー変化の寄与があり、全体として負の値のエントロピー変化が観測されたと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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