研究実績の概要 |
本研究室において分離されたプラスチック分解菌Roseateles depolymerans TB-87株は、脂肪族型のみならず脂肪族-芳香族型の生分解プラスチックを固体のまま高効率で分解する。本菌株のプラスチック分解酵素について検討したところ、本菌株は基質特性や分解活性のよく似た2種類の分解酵素Est-H, Est-Lを分泌することが明らかになっている。 これまでにTB-87株のドラフトゲノムの解析と、精製酵素の内部アミノ酸配列から両酵素の遺伝子を特定し、クローニングを行った。大腸菌での発現を目指して各種宿主-ベクター系の検討、コドン改変、リーダーペプチドの改変を試みたところ、Est-Lのみ発現が認められた。しかし、発現タンパクは封入体を形成し、活性は見られなかった。 本酵素はプラスチックを分解する際に疎水的相互作用による表面への付着を行うための疎水性ドメインを有していると考えられる。しかし、その疎水性ドメインの存在が大腸菌での発現時のフォールディングを阻害している可能性が考えられた。そこで、誘導時期の検討と並行して界面活性剤の添加やヒートショックを試み、フォールデングの促進を促したところ、界面活性剤としてdeoxy-BIGCHAPを用いた場合に、わずかに活性が認められた。またプラスチックリサイクルへの応用を目指し、他の微生物由来の分解酵素についても検討を行った結果、高い分解性を持つ酵母を選択し、そのプラスチック分解能の検討を行った。さらに本酵素の低コストな発酵生産法を検討し、一定の成果を得た。
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