研究課題/領域番号 |
26288087
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
岩佐 精二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30303712)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イムノアッセイ / イムノクロマトグラフィー / 免疫 / 残留農薬検査 / ハプテン合成 / 触媒 / 有機合成 / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究は、精密有機合成化学と抗体工学との先端融合技術を用いることより免疫的化学測定法(イムノアッセイ)を利用した低分子残留農薬分析法を確立し、実質的に現在用いられているすべての農薬の簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境などの特徴を有する分子センサーを提供することを目的とする。すなわち低分子農薬に触媒的精密合成技術を用いてリンカーを導入し、巨大蛋白と結合させてマウス免疫することで分子センサーとしての標的農薬特異的なモノクロナール抗体を作成する。得られる抗体の分析精度をppbレベルの分析精度を目標として環境負荷物質としての低分子残留農薬分析法の確立をする。その結果、8種ネオニコチノイド系農薬のイムノクロマトキット試作品、アフラトキシンB1、メパニピリム、チアメトキサム、エマメクチン、ニテンピラム、アセタミプリド、イソプロチオラン、ピリダリル、ミクロブタニルハプテン等9種類のハプテン合成に基づく標識試薬作製、メパニピリムに対するモノクローナル抗体(間接競合ELISAによるIC50値: 1.4 ng/mL)等の作製に成功した。またカビ毒(DON, NIV)用ハプテンを合成した。クロチアニジン、ジノテフラン、ボスカリドのキット化を行った。イムノクロマトキットの試作品を提供できる段階に達した。これらの成果は、国内会議5件、国際会議5件、学術論文3報で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
免疫的化学測定法(イムノアッセイ)を利用した低分子残留農薬分析法を確立し、農薬の簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境などの特徴を有する分子センサーを提供することを目的としている。ハプテン群合成に必要なリンカー導入に関するリン酸エステル基導入や酢酸ユニット導入触媒の開発に成功し、標的用農薬ハプテン4種、イムノクロマト法によるキット化試作品作製、ネオニコチノイド系用キットの完成などを含めて国内会議5件、国際会議5件、学術論文3報で報告したこと、また新規農薬抗体の作製およびそのイムノクロマトグラフィーにセットしキット化に成功し,実証試験の段階に到達していることから当初の予定の目標とした抗体作製を段階を大きく超えて進展している。
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今後の研究の推進方策 |
開発したプロセスにより農薬ハプテン合成―タンパクとの融合―マウス免疫―抗体作成―農薬分子センサー化および工業化を行う。一方、これまで環境負荷物質に対して精密有機合成技術でリンカーの導入を検討しているが、逆に高分子量の担持用タンパクにリンカーの導入を検討する。(Fig. 5) すなわち、タンパクの部分構造であるアミノ基やカルボキシル残基にリンカーを導入し(主に縮合反応を用いる)、続いて標的農薬官能基群とのカップリングを試みる。この発想は新規であり報告例はない。しかし農薬ハプテン分子の全合成や合成的修飾よりも実験的に遥かに簡便で、免疫用のタンパクとの標的農薬ハプテンとの融合体が容易に提供できるため迅速に抗体作成が完成する可能性があるため精査する。(担当:岩佐、(公財)京都高度技術研究所 産学連携事業部 連携支援グループ平成28年4月―平成29年3月) 6)抗体作成にともない標識農薬ハプテンが必要でありこれらを合成する。標的はイソキサチオン誘導体の合成、イマザリル誘導体、トリフルミゾール誘導体、フェニトロチオン誘導体、マラチオン誘導体、クロロタロニル誘導体、ボスカリド誘導体、フィプロニル誘導体などの農薬ハプテン合成を随時行う。(Fig.7)これら一群の農薬は近年、分析依頼の頻度、重要性ともに最も社会的要求度の高い農薬である。なお予備合成実験は終了しており合成の最適化を期間中に行う。誘導体合成は20化合物の合成を目的とし行う。現在、最も重要な23種の標的農薬に対応する特異的な抗体が完成しており、実質的に現在使用されている他の20種類の抗体の作成が完成すればすべての国内市販農薬の簡易分析が完成する。(担当:岩佐、博士後期課程学生2名、平成27年4月―平成29年3月)
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次年度使用額が生じた理由 |
ハプテン合成に関する触媒設計、合成が良好に推移し最適化に消費される予定の費用がセーブできたこと、また抗体作製において目的とする高感度の農薬標的抗体が良好に進展し、試行錯誤の費用が最小にとどまったこと等により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画は 1)抗体作製用のハプテン合成およびこれに関わる触媒、薬品、試薬およびその精製用有機溶媒、2)構造決定のための分析費(核磁気共鳴装置による分析、質量分析、元素分析、赤外分析等)、等の消耗品、3)抗体作製費、4)論文作成、学会発表等に用いる。
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