有機系二次電池の正極材料作製において,活物質には必ず導電性炭素を添加する必要が有るが,これまでの研究では活物質と導電性炭素の相互作用を考慮した材料開発の事例はない.今年度は,導電性炭素としてCNT,活物質には芳香族基を導入することにより両物質の相互作用を強め,電池の内部抵抗低下と,充放電の繰り返しにおける耐久性の改善を試みることにした.活物質には昨年までに開発した分子の端にジスルフィド結合を有する分子と単体硫黄の加熱混合で生成する有機ポリスルフィド複合体を用いた.材料設計としては,電池の特性として充電時に一定量の充電が済むと抵抗値が高まるロック現象を誘起する,メタ位にジスルフィド結合が結合したベンゼン環と,CNTとの相互作用が良好なビフェニルの導入を考案して,単体硫黄との加熱混合によってポリスルフィドの成分として導入することに成功した.電池へ挿入する正極材料は,活物質30%wt,バインダーのPVDFを20%wt,導電性炭素を50%wtで作製した.導電性炭素はカーボンブラックとCNTの混合比を変えながら検討を行った.導電性炭素をCNTのみで作製すると,現行の正極材料の成分すべてを混合し,コイン状に成型することができなかった.しかし,活物質30%wt, PVDFを20%wt,カーボンブラック40%wt,CNT10%wtによる正極材料の作製には成功した.これをもちいたリチウム二次電池の充放電評価については定電流方式で行ったところ1000 mA/gのペースで行って,広範なプラトー領域と放電容量密度270Ah/kgを示すことが分かり,20回充放電しても90%,200回でも70%容量は保持した.これまでの有機系二次電池における問題点で有った繰り返し充放電による耐久性を克服した,実用化に期待が持てる電池の製法開発において有用な知見を得たと言える.
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