研究課題/領域番号 |
26288092
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中村 龍平 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (10447419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素製造 |
研究実績の概要 |
水は自然界に最も豊富に存在する電子源であり、プロトン還元による水素製造ならびに二酸化炭素還元による物質合成を担う重要な資源と言える。しかし、人工的に水から電子を獲得する反応に優れた触媒として知られているのは希少金属であり, 豊富に存在する元素からなる触媒材料の開発が望まれている。この様な背景のもと本課題では、生体内で進行するMn酵素を介した水の分解反応に着目し、生体機能模倣型の人工Mn触媒の開発に取り組んでいる。 H26年度は、「生体Mn酵素と人工Mn触媒の活性の違いは、人工Mn触媒の電子/プロトン輸送の機構が違うことにあるのではないか?」との仮説を立て、プロトン輸送経路を最適化することで人工Mn触媒の高機能化を試みた. 具体的には, 酸塩基則(libido rule of general acid-base catalysis)に則り、Mn2+(OH2)とMn3+(OH2)の間にpKaを有する塩基を導入することで、協奏的プロトン-電子移動の誘起を図った。その結果、添加した塩基のプロトン受容能力が高くなるにつれ電流値が大きくなり、電流がより負の電位から流れた。最も高いプロトン受容能力をもつ塩基が存在する環境では、塩基が存在しない場合と比べて水分解活性が最大15倍増大し、強アルカリで得られる値の60%にまで達した。以上より、電子とプロトンの移動のタイミングを調整することにより、人工Mn触媒の酸素発生触媒活性が大幅に向上することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の結果は、自然界の酵素が有する電子/プロトン輸送能を理解し、人工Mn触媒へと付与することで触媒能が大幅に向上することを示したものである。これは水分解触媒の開発に向けた新たな設計指針になりえるものであり、重要な成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
結晶構造の異なる酸化マンガンを合成し、Mn3+の不均化に対する安定性と水分解特性の評価を行う。また、六配位構造のMn3+の配位子の一部を酸素から窒素またはフッ素に置換した新規酸化マンガンを合成し、Mn3+の安定性と触媒能の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗具合を考慮に入れ、反応生成物解析機器の購入を翌年度に見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗を踏まえ、H27年度後期において反応生成物解析機器を導入する予定である。
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