研究課題
水は自然界に最も豊富に存在する電子源であり、プロトン還元による水素製造ならびに二酸化炭素還元による物質合成を担う重要な資源と言える。しかし、人工的に水から電子を獲得する反応に優れた触媒として知られているのは希少金属であり、豊富に存在する元素からなる触媒材料の開発が望まれている。この様な背景のもと本課題では、生体内で進行するMn酵素を介した水の分解反応に着目し、生体機能模倣型の人工Mn触媒の開発に取り組んできた。昨年度までの研究により、(i)プロトン共役電子移動の誘発ならびに(ii)結晶面制御によるMn3+の特異的な安定化により、酸化マンガン系触媒の高活性化を実現してきた。今年度は、本研究で新たに提唱している「Mn3+の安定化による水分解触媒の高機能化モデル」を他元素への適用を図るべく、現在最も活性の高い人工酸素発生触媒である酸化イリジウムの水酸化機構についても検討を進めてきた。その結果、IrOxでは金属イオンの価数変化が容易に進行し、律速過程は二つの酸素原子をカップリングするO-O結合生成段階であることを突き止めた。この価数変化の容易さはIrOxの持つlow-spin電子配置に由来し、high-spin電子配置を取ることで不均化するMn3+と対照的であった。また本年度は、ソウル大学校工科大学のNam教授らとの共同研究により、酸化マンガン触媒を直径10 nm程度までナノ粒子化すると表面のMn3+が特異的に安定化され、中性環境での水分解活性が大きく向上することを見出した。これらの一連の研究成果は、d4の電子配置を持つ反応中間体のスピン状態制御の重要性を示すものであり、豊富に存在する3d元素を利用した中性pHで駆動する水分解触媒の開発に向けて、具体的な設計指針を提供するものである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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