研究課題/領域番号 |
26288094
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大下 浄治 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90201376)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機半導体材料 / 有機太陽電池 |
研究実績の概要 |
無機元素をπ共役ポリマーにハイブリッド化することによって、ポリマーの電子状態を自在にチューニングし、望みの機能を付与しようとする研究が世界的に行われている。申請者らは、この分野において、14族元素のSi・Geを用いた新材料開発で先駆的な役割を果たしてきたが、本研究では、ポリマー太陽電池のホスト材料と色素増感太陽電池の増感色素の開発にターゲットを絞って検討を行っている。H26年度は、具体的に以下のような実績を上げている。 1.ジシラノビチオフェン(DSBT)ポリマーの合成:DSBTをドナー部として、各種のアクセプター部と連結させたD-A型共役高分子を合成することに成功し、それらを用いた薄膜太陽電池の作製にも成功した。その結果、DSBTとアクセプターのコンビネーションの最適化を行うことができた(論文投稿中)。 2.DSBT-ポリマーの色素増感太陽電池(DSSC)への応用:DSBTとピリジンまたはピラジンからなる共役ポリマーを合成した。これらが、酸化チタン表面の水酸基と反応し、Ti-O-Si結合の形成によって、固定化できることを見出した。得られたポリマー修飾酸化チタンを電極としてDSSCを作製することに成功した。色素の無機酸化物表面への新しい固定化法として興味深い(論文発表済み)。 3.ビジチエノゲルモール(DTG2)ポリマーの合成:DTG2をドナーとするD-A型共役ポリマーを合成し、薄膜太陽電池へ応用した。これまで一般によく用いられてきたジチエノゲルモール(DTG)をドナーとして含むD-A型共役ポリマーより高性能であることを明らかにした(論文発表済み)。 4.新規のスピロ縮環型シロール・ゲルモールの合成:合成に成功し、光エネルギー移動などの特徴ある光学特性を明らかにした(論文作成中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、合成実験は、おおむね順調に進展していると判断できる。 前述のように、合成実験は順調に進展している。一部、オリゴシラノビチオフェン(OSBT)、ジゲルマノビチオフェン(DGBT)など、計画通りには合成が達成できていないものもあるが、新規の拡張縮環型シロールの合成やDTG骨格を有するDSSC用増感色素の合成に関しては計画を前倒しして取り掛かっている。 さらに、合成した材料を用いた素子作製を行い、それらが薄膜太陽電池およびDSSCとして有効に機能することを見出した。まだ、性能は十分とはいえないが、今後検討を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を元にして、研究を推進する。H27年度は、具体的に以下のような検討を行う予定にしている。 1.DSBTポリマーの検討:DSBTを含むD-A型ポリマーの薄膜太陽電池への応用に関して、素子作製条件などを検討して、さらなる性能の向上を図る。また、これらのポリマーの新しい機能を探索する。 2.新規シロール・ゲルモールの合成と機能開発:スピロ縮環型や拡張縮環型の新しいシロール・ゲルモールの合成法を確立して、その物性を明らかにし、機能開発を検討する。OSBTおよびDGBTの合成も進める。 3.さらに新しいSi-またはGe-含有π電子系の構築と高分子化を研乙する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、分析用に卓上NMRの導入を予定していたが、合成実験は順調に進んでいるが、条件検討が困難であったため、予想以上に経費がかかったこと、素子作製の検討のため、スピンコータが必要になったこと、専攻共通のNMRの整備が進み、使いやすくなり、卓上NMRの必要性が薄れたことから、NMRの購入を止めて、NMR用の予算の約半分をスピンコータと合成用の消耗品の購入にあてた。その結果として、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後も、合成実験の検討に経費がかかると考えられるので、そのために充当する予定である。
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備考 |
Top-pageから、Research, Publications, Presentationsで、それぞれ、研究概要、論文および学会発表リストが閲覧できる。
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