研究課題/領域番号 |
26288098
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上原 宏樹 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70292620)
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研究分担者 |
山延 健 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40183983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶融延伸 / 分子鎖絡み合い / ポリエチレン / 超高分子量 / 繊維 / 膜 / 高強度 / 六方晶 |
研究実績の概要 |
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の溶融延伸過程においては、分子鎖絡み合いが応力を伝達することで、非晶状態から準安定相である六方晶型への一時通過的な結晶化を経て、最終的に安定相である斜方晶型へ伸び切り結晶化する。この六方晶発現時に、延伸応力が平坦になるひずみ領域が出現することから、分子鎖絡み合いの解きほぐしが起こっていることが推測される。ここで、この六方晶の生成量はUHMW-PE分子量が高い程多いが、得られる伸び切り鎖結晶(ECC)の長さは短い。したがって、高分子量では解きほぐれ難い「深い」絡み合いが多く含まれるのに対し、低分子量では「浅い」絡み合いが解きほぐれてECCが成長すると考えられる。これらのことから、分子鎖絡み合いの「深さ」は六方晶を指標として定量化できると考えられるが、もう一つの重要な分子量特性である分子量分布との相関は明らかになっていない。また、このような絡み合いの解きほぐしは、延伸速度にも大きく影響されることが予想される。そこで、本研究では分子量分布が異なるUHMW-PEについて、様々な延伸速度で溶融延伸を行い、その過程におけるその場(in-situ)広角X線回折(WAXD)測定および小角X線散乱(SAXS)測定を通じて、六方晶への伸び切り結晶化挙動に与える分子量分布の効果および延伸速度依存性を評価することを目的とした。 その結果、分子量分布の狭い試料の方が「深い」絡み合いを多く含むが、延伸速度を低くすることにより、分子量分布の広い試料における「浅い」絡み合い類似の解きほぐしが進行することで、サイズの大きなECCを生成させられることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触媒系の改良により分子量分布の狭いUHMW-PEが得られるようになり、分子構造の均質化することで、既存のUHMW-PEを超える物性が引き出せると期待されている。本研究は、この分子量分布の狭いUHMW-PEについても分子鎖絡み合いの解きほぐしに成功しており、交付申請書に記載した「研究の目的」について、その一部をすでに達成している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、分子鎖絡み合いの解きほぐし処理を施した膜を大面積で得るための方法論を確立し、さらにこれを繊維化するための技術開発の検討に入っている。今後、これらを連続的に調製するための装置セットアップを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度でインプロセス計測用NMRユニットを設置する大型二軸延伸装置の仕様が決定したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にインプロセス計測用NMRユニットを購入予定である。
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