研究実績の概要 |
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCS)を用いて、高分子ゲル中のタンパク質分子の拡散挙動を検討した。等電点の異なるタンパク質について、ゲルの電荷の影響を見たところ、負電荷を有するタンパク質ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin, BSA)の拡散係数は、負電荷を有するゲル中では溶液中よりも大きく、正電荷を有するゲル中では溶液中よりもかなり小さいことがわかった。BSAと同符号電荷を有するゲル中では、ゲルとタンパク質間の静電反発力により、ゲル近傍でのタンパク質の動きが激しくなっているのに対して、異符号電荷を有するゲル中では、ゲルとタンパク質間の静電引力のために、タンパク質がゲル近傍に捕捉されているものと考えられる。一方、正電荷を有する卵白リゾチームの場合には、正負いずれの電荷を有するゲル中でも、溶液中よりも拡散係数が小さくなった。リゾチームは、近傍の高分子に、その電荷によらず吸着されやすいことや、自己会合しやすいことが知られており、当該タンパク質の特性が表れたものと考えられる。さらに、半円筒型の石英プリズム上に構築した負電荷を有するPoly(methacrylic acid)ナトリウム塩(PMA.Na)からなるブラシを、正電荷を有するPoly(2-(dimethylamino)ethyl methacrylate)塩酸塩(PDMAEMA.HCl)の水溶液中に浸漬し、和周波発生(Sum Frequency Generation, SFG)分光法により、ブラシ近傍の水に由来するシグナルを測定した。PMA.Na ブラシと溶液中のPDMAEMA.HCl間でPolyion Complexが形成されるのに伴い、水の配向の程度が減少し、O-H伸縮振動帯のシグナル強度が減少することが確認された。
|