研究課題/領域番号 |
26288101
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
塚田 益裕 信州大学, 繊維学部, 特任教授 (20414922)
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研究分担者 |
平林 公男 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20222250)
大川 浩作 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60291390)
野村 隆臣 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90362110)
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50344023)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水生昆虫 / シルクタンパク質 / 足場材料 / フィブロインコンポジット |
研究実績の概要 |
ヒゲナガカワトビケラ (Stenopsyche marmorata) が水中環境において吐糸するシルク様タンパク質の原料確保、ならびに、効率的な抽出・純化手段の開発と、その材料化学的応用研究を同時進行する研究課題のもと、主に、足場系材料創出を試行したサブテーマを実施した。その結果 (i) S. marmorata 実験飼育法を工夫し、水中吐糸したシルク様繊維からの高効率なタンパク質抽出法が創出され、原料重量の半分程度までの収率改善が実現できた。(ii) (i) の手段によって調製されたタンパク質組成物が、良好な水溶性を示しながら、同時に、カルシウムイオン等の刺激により瞬時に凝固することが見出され、さらに、(iii) 上記 (ii) の性質を利用しつつ、従来のカイコフィブロインとのハイブリッド多孔質に整形可能であり、これを足場とする細胞培養実験において、特に、骨芽細胞との良好な親和性を持つことが明らかになった。上記に関連する成果を、原著論文、国際学会、国内学会、および特許として出版・情報発信した。S. marmorata 幼虫集団動態解析を含む基礎生物研究の論文もオープンアクセス出版物として公表した。2015年度に導入した細胞凍結保存用備品を活用しながら、現有設備との有機的な連携により、実験作業の現場環境改善は顕著であり、効率的なデータ収集および正確な実験結果整理が可能となった。このことにより、次の研究課題申請においても、上記 (iii) サブテーマにおいて取り扱う細胞腫がより多彩となり、成果波及範囲が拡張された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画としてヒゲナガカワトビケラ (Stenopsyche marmorata) の水中シルクタンパク質 (E2P) のみを「唯一の原料」とし、さらに、その原料を用いてエレクトロスピニング行程を経て得られる「ナノファイバー不織布」を足場材料として評価するサブテーマがあったが、次の想定内の理由 (i) および(ii) により、部分的に当初計画を見直している:(i) E2P の量的制限により実験条件設定の多様化とバッチ母数確保に難があった。(ii) エレクトロスピニング行程は実施可能であったが、得られたナノファイバー不織布が高い水溶性を持つため、細胞培養実験系に組み込むことの障害となった。左記 (i) (ii) は当初計画段階において想定されため、「研究実績の概要」記載 (iii) のとおり、カイコ (Bombyx mori) フィブロインと (Bmsf) のハイブリッド多孔質をカルシウム処理し、水不溶性足場の創出を試みることとした。左記足場の骨芽細胞に対する親和性評価結果に基づき、主題区分 (2) とした。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」記載のとおり、主に骨芽細胞培養実験における (iii) Bmsf-E2P ハイブリッド多孔質足場を用いる評価系から良好なデータが引き出せれば、次に、当初計画に準じて (iv) エレクトロスピニング行程を経て、水不溶性 Bmsf-E2P ハイブリッドナノファイバー不織布の創出へと進み、硬組織の修復や接合のための足場材料としてに利用できるよう、技術周辺の調査および関連実験を実施する。総じて、S. marmorata 由来の E2P 基礎研究は良好に進展しつつあるが、他方では、その材料科学研究におけるボトルネックを精査しつつ、随時、研究計画を見直し、最終年度では一定の評価および、研究課題の継続性、ならびに、特に科研費関連の他研究課題との「接続性」を吟味する。例えば、S. marmorata 由来 E2P の量的確保における問題を低減するため、Bmsf の化学リン酸化行程を経て得られる phosphorylated Bmsf を代替え素材として開発するなどの方向性も含めて、当初計画に対して、より発展的な次段階の研究課題を模索する方向で検討を進める。
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