研究課題
前年度に引き続き、天然高分子であるカードランの化学修飾を行い、得られたカードラン誘導体をマクロモノマーとした二次元高分子の合成を検討した。4,6-アセタール化によりマクロモノマーの側鎖に様々な芳香族基の導入を試みたところ、フェニル基だけでなくナフチル基についても高置換度(0.9以上)でマクロモノマーの側鎖に導入できることを確認した。核磁気共鳴スペクトル測定、円偏光二色性スペクトル測定、光散乱測定、蛍光スペクトル測定等により、マクロモノマーの主鎖が三重螺旋を形成し、その軸方向に発色基がπ-πスタッキングで規則正しく配列していることを確認した。得られたマクロモノマーはいずれもクロロホルムに可溶であり、その溶液を固体基板上で蒸発乾固することにより、三重螺旋間での共螺旋交差による架橋重合が起こることを原子間力顕微鏡観察により確認した。ガラス板やテフロン板上に展開したマクロモノマー溶液からは、直径がセンチメートル規模の広さの自立した高分子膜を作製することに成功した。この高分子膜は引っ張りや曲げに対して丈夫であり、フレキシブルな透明膜であった。ナフチル基が導入されたマクロモノマーから得られた高分子膜は、UV照射により蛍光を発することを確認した。さらに、フェニル基を側鎖に有するマクロモノマーから得られた高分子膜は、室温で数日間希塩酸中に浸漬することによりカードラン膜に直接変換できることを見い出した。すなわち、通常はゲル化により作製が困難とされる丈夫なカードラン膜を、本研究のカードラン誘導体膜を前駆体膜とすることにより簡便に作製することに成功した。これにより、免疫細胞と特異的に結合する性質をもつカードランの成膜方法を確立することができ、医用材料への応用の道も開かれた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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ACS Macro Letters
巻: 6 ページ: 21-26
10.1021/acsmacrolett.6b00706
http://www.isit.or.jp/lab4/gyoseki/