研究課題/領域番号 |
26288103
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 秀人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20283872)
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研究分担者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40314504)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 表面・界面物性 / 微粒子 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
本年度は特に次の項目に焦点を当てて検討を行った。 1.汎用ポリマーと疎水性ポリイオン液体(PIL)からなるヤヌス粒子を作製することを検討した。この際,イオン液体モノマーの重合率が正確に測定できない問題があったが,本年度導入した卓上MNR を用いて,その重合率を評価することが出来た。まずポリメタクリル酸メチル(PMMA)/PIL複合粒子を合成し,溶媒吸収蒸発法を用いたモルフォロジィの制御を行った。溶媒吸収蒸発法に使用する有機溶媒として水に僅かに溶解するメチルイソブチルケトン(MIBK)を粒子中から媒体中に逃がすという手法にてMIBKの放出を試みた結果,まだ多くの制御パラメータの検討が必要なものの,モルフォロジィをヤヌス構造に変化させることに成功した。 2.さらに塩交換による機能化をはかるため,架橋構造の導入が必要であるが,その予備段階として前年度検討したイオン液体成分をシェルに有する架橋中空粒子を基材としてシェル部にアニオン交換を行い鉄イオンの導入を行い,洗浄後,還元剤を加えることによりシェル層への鉄粒子の合成を試みた。媒体にはフリーの鉄粒子が無く,得られた粒子は着色しており,磁石を近づけると粒子が引き寄せられ,アニオン交換を利用した様々な機能性を付与が可能であることを示すことができた。 3.ビルディングブロック粒子の展開として,これまで高分子微粒子の分散安定剤として用いる水素結合受容体であるポリビニルピロリドン(PVP)とポリアクリル酸の水素結合を利用してきたが,適用範囲の拡大のため水素結合供与体であるシリカ粒子のシラノール基間の水素結合を利用することを検討した。その結果,ヘテロ凝集のドライビングフォースがシラノール基とPVPとの水素結合であることを明らかにし,シリカ粒子と高分子微粒子の分散安定剤間の水素結合を利用することで,様々な高分子微粒子において,複合粒子の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成27年度の研究計画は、①複合微粒子に良溶媒を吸収させアニーリングを施す方法(溶媒吸収蒸発法)により,特に海島構造が得られた二種類のポリマーをマクロ相分離させることで熱力学的に安定なヤヌス状複合微粒子の合成を試みる。②塩交換の条件によってはポリイオン液体粒子の架橋構造導入を試み,溶解度の観点から生成が困難であった系を検討する。③上記で得られた様々なポリイオン液体複合粒子自身の磁性や電気的な物性を明らかにするため,残留磁束密度測定やインピーダンス測定などの評価を行う。④得られたポリイオン液体粒子,及び複合粒子自体をビルディングブロック材料に発展させ,積極的な粒子配列制御を目指す。であった。①に関しては,NMRの導入により詳細な重合挙動の解析もでき,多くのパラメータの検討が必要なものの最終的に目的としていたヤヌス状粒子の合成に成功した。②,④に関しては当初の計画から少し変更があるものの,おおむね目的とする結果が得られ,その成果の一部をすでに論文にまとめて学術雑誌に投稿し掲載されたほか,学会発表も行った。なお③に関しては,予定していた機器の不良のため達成出来ていないが,複合粒子の合成に成功しており,来年度に直ぐにその検討が可能であることが予想され,研究計画は順調に推移おり,十分な研究成果と知見を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はおおむね順調に進展しており,今後は,さらに詳細な粒子構造制御を試みる。具体的には,良溶媒を吸収させアニーリングを行う溶媒吸収蒸発法の使用溶媒や水相への添加剤および溶存二酸化炭素などを詳細に検討して,マクロ相分離構造の相関を明らかにし,その制御を試みる。さらに応用の拡大に向けて,アニオン主鎖のイオン液体モノマーの適用も検討する。なお,昨年度,申請した国際共同研究加速基金(国際共同研究加速)に採択され,本基課題の発展を目指し,ビルディングブロックのより精密な制御をするため精密制御された分散安定剤の作製をリビングラジカル重合の専門とするAustraliaのニューサウスウェールズ大学にて共同研究をおこなう。この成果を,取り入れることにより本基課題のより加速を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入した卓上NMRについて,制御装置(コンピュータ)および除震台を研究室保有のものを流用し,当初作製を依頼する予定であったイオン液体モノマーを自作したため,また,採用予定であった研究支援員が急遽キャンセルになったことなどにより,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の円滑な遂行のために本年度は研究支援員を確保し,そのための人件費を計上する。他は,試薬代,重合用のガラス器具代や,購入したNMRの機器分析用の消耗品,英文校閲費として使用する予定である。
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