研究課題/領域番号 |
26288108
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20288559)
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研究分担者 |
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50613296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機ー無機ハイブリッド / 分子制御 |
研究実績の概要 |
サブnm~数十nmの構造(中距離構造)は種々の材料物性に影響を及ぼす極めて重要な構造サイズ領域である。一方で、無機非晶質材料においては精密な中距離構造制御が困難であるため、材料の加工成型性は高いものの物性制御の自由度が低いことが問題となってきた。本研究では、平成25年度からの継続課題として、1) 中距離構造が制御された無機系オリゴマー分子の作製および2) これらオリゴマー分子をナノビルディングブロックとして利用した非晶質固体材料創成を試みた。特に、各種NMR測定を駆使することで無機系オリゴマー分子構造を同定し目標達成に向けた分子合成指針を得ることを目的とした。昨年度の研究課題において得られた知見を基づいて、複数種の有機官能基を含有するケイリン酸塩系オリゴマー分子前駆体を合成し、これをサイト選択的に重合することで非晶質固体材料を作製した。具体的には、(Ph2MeSiO)3POおよび(Ph2MeSiO)2PPhOを高収率で合成しこれらをポストトリートメントにより架橋することで中距離構造が制御されたケイリン酸ガラスを合成した。これらのプロセスにおける、反応条件と形成される化学種(中距離構造)との相関を、NMRを用いた局所構造解析により明らかした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オルトリン酸およびフェニルホスホン酸のどちらを用いた場合においても透明な粘調液体が得られ、NMR測定の結果、(Ph2MeSiO)3POおよび(Ph2MeSiO)2PPhOがそれぞれ80%以上の収率で形成することが明らかになった。150 °C、6時間という熱処理条件下においては、副反応を伴うことなく目的オリゴマー分子が高収率で得られることが明らかになった。 (Ph2MeSiO)2PPhOを熱処理した場合、材料は黄~橙色を呈した均質な非晶質固体となった。29Si NMRスペクトルにおいて、D2PSS種(-25.8 ppm)およびD2SSS種(-63.7 ppm)に由来するピークが確認された。これは、Siのオキソ架橋数が2であることを意味しており、 (Ph2MeSiO)2PPhOオリゴマー分子(オキソ架橋数1)中メチル基の選択的な熱分解反応とそれに伴うオキソ架橋ポリマー化が熱処理により誘起されたことを示唆している。一方で、31P NMRスペクトル)の10.3 ppmおよび0.1 ppmのピークはそれぞれT1, T2種に対応しており、オリゴマー分子中のSi-O-P結合は250 °C熱処理後も保持されている。同様にして、(Ph2MeSiO)3POを熱処理した場合においても、オリゴマー分子中のSi-O-Pを保持した状態で、オキソ架橋ポリマーネットワークが形成した。以上の結果より、非晶質固体材料中の中距離構造が前駆体オリゴマー分子により制御可能であると言える。今回作製した2種類のオリゴマー分子を種々の割合で混合し重合させることにより、両者の中間的な中距離構造および物性を示す材料の作製が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、一官能有機シリコンアルコキシドやシリコン塩化物を使用することで、分子構造を精密に規定したオリゴマーをほぼ100%の収率で合成できることを見いだしている。また、官能基間の反応性や熱分解耐性の差を利用することで、選択的に重合反応を誘起できる。この手法を用いることで、これまでに、無機のオキソ主鎖が-(O-Si-O-P)n-交互共重合体に加えて,-(O-Si-O-Si-O-P)n-となる、ケイ酸塩基が複数個並んだ新しい分子の合成にも成功している。今後は、このようにして得られた新しい無機高分子の分子形態制御を深化し、物性制御へと展開する。特に、分子内の酸化物基配列構造の完全制御を達成する。また、これまで手尾w付けていなかった、分子間の構造制御へと研究を拡張展開する。分子間は、これまで側鎖の有機官能基の化学的相互作用、オキソ結合による3次元架橋、C-C結合による3次元架橋を行ってきている。今後は、分子内における架橋部位の限定や3次元構造の制御により,より高位の物性制御を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗を考慮し、H27年度により高額な試薬や依頼測定は予想された。このため、研究の進捗を妨げない範囲で,予算のセーブを行いバランスを取ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
組成分析などの依頼測定や工学士薬湯で使用する予定である。
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