研究課題/領域番号 |
26288109
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中田 一弥 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (70514115)
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研究分担者 |
寺島 千晶 東京理科大学, 総合研究機構, 准教授 (00596942)
藤嶋 昭 東京理科大学, 学長室, 学長 (30078307)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化炭素排出削減 |
研究実績の概要 |
本研究では、電気化学的還元(電解還元)法に着目し、エネルギー源として太陽光を用いて、二酸化炭素と海水を原料として、電解還元法で有用物質を生成する技術を確立する。具体的には、導電性ダイヤモンドを電極、二酸化炭素を溶解させた海水を電解液として用いた、太陽光発電を駆動力とした電解還元システムを構築し、有用有機物質を高効率・高選択的に生成することを目的とする。本年度は下記について行った。 1)ボロン(p型)をドープした導電性ダイヤモンド電極(ドープ率:0.1~1.0%)を作製した。ドープ率はグロー放電発光分析法にて確認した。また、ドープ率を変化させることで、導電率、結晶サイズや界面分布が変化するため、導電率計や走査型電子顕微鏡にてそれらを確認した。2)導電性ダイヤモンドの表面修飾を行った。修飾分子は、水酸基(-OH)およびアミノ基(-NH2)を検討した。また、二酸化炭素と錯形成することが知られているイオン液体(例:1-アリル-3-メチルイミダゾリウム クロリド)も検討した。3)上記で作製した導電性ダイヤモンド電極と白金対極からなる電解セルを組立て、二酸化炭素をバブリングによって電解質溶液に溶解させた。サイクリックボルタンメトリー(CV)によって溶媒の電位窓と二酸化炭素の還元電位を確認した。4)上記で得た知見を元に、定電圧を印加して一定時間の電解還元を行った。電流値の変化と気体発生量をモニターした。5)電解後は、発生気体をガスクロマトグラフ、液相に溶解している物質を液体クロマトグラフによって定量評価した。その結果、二酸化炭素が還元され、ホルムアルデヒドが生成していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した計画通り実験を進めることが出来た。また、当初期待していた二酸化炭素の還元によるホルムアルデヒド生成についても成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記について検討する。 1)海水を用いた電解還元を実施する。実際に海から採取した海水を用いて電解還元を実施する。2)また、海水を各種のろ過(ろ紙による自然ろ過(粗大なくずの除去)、活性炭ろ過(重金属の吸着)、遠心ろ過(菌類の除去)等)によって精製し、電解に用いる。ろ過の電解還元に対する影響を調査する。3)作製した電極の中で未精製の海水、あるいは精製済みの海水用として最適な電極を探索する。4)NaCl濃度の変化が電解還元生成物の種類や単位時間あたりの生成量、電解効率に与える影響について検証する。5)不揮発性物質であるイオン性液体(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate等)を海水に添加する。イオン液体は二酸化炭素と錯形成して触媒として働くため、電解還元による生成物の種類が変化する可能性がある。また、イオン液体は二酸化炭素の還元電位を下げる働きがあり、さらにイオン性液体を用いた二酸化炭素の電解還元の例は少ないため、学術的な観点からも興味深い。6)電解液として二酸化炭素の溶解性が高いプロトン性溶媒(メタノール等)、および非プロトン性溶媒(DMF, アセトニトリル等)を用いて電解還元を行い、生成物の種類と生成効率を海水の場合と比較する。7)海水中での電解還元によってダイヤモンド電極が腐食していないかを検証する。実際にはSEM、XPS、AFMを用いて、表面構造、元素の分布についての変化がないかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗により、次年度に装置購入が必要となったため、本年度の物品費を抑え、次年度に回すことを考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度および次年度の予算を合算した上で、装置購入を行う予定である。
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