研究課題/領域番号 |
26288110
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
木村 辰雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 研究グループ付 (20308191)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多孔体 / メソポーラス / 無機固体化学 / ナノ機能材料 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、界面活性剤にPluronic F127を使用し、メソポーラスホスホン酸アルミニウムの薄膜化を行った。触媒機能等を発現する有機官能基を含む芳香族化合物を含むホスホン酸エステルの有機合成が可能であるかを確認するとともに、それを出発物質とするメソポーラス薄膜の合成を行った。 ・アミノ基(触媒機能)を含むホスホン酸エステルの合成に関しては、既報(ベンゼン架橋ホスホン酸エステルの合成)の合成条件及び手順を参考に、アニリン架橋ホスホン酸エステルの合成が可能であることが確認できた。スルホン基(酸触媒)を含むホスホン酸エステルの合成では、上記(アニリン架橋ホスホン酸エステル)と同条件では、スルホン基が完全に脱離してしまうという問題が生じた。 ・スルホン基とアミノ基を同時に含む芳香族化合物に着目することで、スルホン基の脱離がある程度制御できることを見出した。反応を低温(120℃程度)で行うことが重要であるとの知見も得た。 ・他方、上記2種類のアミノ基及びスルホン基を含むホスホン酸エステルの外注合成先の調査を開始した。実際に依頼合成も実施し、当該ホスホン酸エステルを大量合成するための課題等が抽出できた。 ・上記2種類のアミノ基及びスルホン基を含むホスホン酸エステル(塩酸処理物)を出発原料としてホスホン酸アルミニウム薄膜の合成を行った結果、構造規則性は十分ではないものの、メソポーラス薄膜の合成は可能であった。得られたメソポーラス薄膜の組成をXPS測定で確認した結果、400℃焼成した薄膜からはアミノ基のほとんどが脱離していた。一方、スルホン基は、触媒反応に展開するだけの十分な量が導入できていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算提案書に記載した内容通り、以下の研究成果が得られている。 1.市販の2,5-ジブロモアニリンからアミノ基を含むホスホン酸エステルの合成が可能であることを確認した。 2.想定していた2,5-ジブロモベンゼンスルホン酸からはスルホン基を含むホスホン酸エステルの合成はできなかったが、スルホン基とアミノ基を同時に含む芳香族化合物から、合成条件(特に合成温度が重要)等の最適化により、スルホン基を含むホスホン酸エステルの代用化合物が得られることを見出した。 3.スルホン化或いはアミノ化したベンゼン架橋ホスホン酸エステルの塩酸処理物を出発原料としてメソポーラスホスホン酸アルミニウムの前駆体薄膜が得られることは確認した。
一方で、触媒機能評価に活用するための構造評価や物性評価については、最適な薄膜が合成されてから行う予定(先送り)としているが、他方では、有機合成に必要な時間を短縮するため、触媒機能等を発現する有機官能基を含むホスホン酸エステルの大量合成の外注先候補の選定、実験時の安全性等に関する情報収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に抽出された課題「アミノ基及びスルホン基を含むホスホン酸アルミニウム前駆体薄膜の構造規則性の向上」「アミノ基を含む他の分子構造を有するホスホン酸エステルの適用可能性を調査」することを前提として、予算提案書に記載した内容に沿った形での研究が進展できると考えている。 1.各種ホスホン酸エステル(出発原料)の塩酸処理条件を連続的に変化させるなど、前駆溶液の調製条件の最適化を図り、アミノ基及びスルホン基を含む前駆体薄膜の構造規則性の向上を図る。 2.前駆体薄膜を焼成(400℃)して界面活性剤(Pluronic F127)を除去しているが、焼成温度を下げるなどしてアミノ基の脱離が抑制できるかを確認する。アミノ基を含む他の分子構造を有するホスホン酸エステルの適用可能性についても調査する。 3.触媒機能評価に活用するための構造評価(例えば、UV-Vis測定、FT-IR測定、XPS測定)や物性評価(例えば、ピリジン吸着FT-IR測定)については、最適なメソポーラス薄膜を得てから行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
有機官能基を含むホスホン酸エステルの合成、分析、外注先の選定、メソポーラスホスホン酸アルミニウムの前駆体薄膜合成に関する課題抽出を優先して進めてきた。当該ホスホン酸エステルの外注等に要した時間が長かったため、最適なメソポーラス薄膜を得てから行う予定の触媒機能評価に活用するための構造評価(例えば、UV-Vis測定、FT-IR測定、XPS測定)や物性評価を次年度に行うことになったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
触媒機能等を発現する有機官能基を含み、構造規則性の高いメソポーラスホスホン酸アルミニウム薄膜の合成法を開発するためには、薄膜合成と構造評価を繰り返し行い、最適条件を見出していくため、当該予算の活用を図り、博士研究員を雇用したいと考えている。研究提案時或いは研究開始当初からを想定していたが、最終年度に行う開発薄膜合成法の拡張性の確認や触媒特性の評価等の取り組みが多岐に渡るため、博士研究員の協力を得て、本研究提案の完遂を目指したい。
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