研究課題/領域番号 |
26288115
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
小野 新平 一般財団法人電力中央研究所, 材料科学研究所, 主任研究員 (30371298)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / 電界効果トランジスタ / 有機半導体 / 無機半導体 |
研究実績の概要 |
本研究では、物質の電子状態を制御する手法として、イオン液体などの電解質の電気二重層の作り出す超強電界を利用し、材料へ高密度電荷注入を行うことで、新機能の発現と、その背景に眠るサイエンスの理解と応用展開を目指すことを目標に研究を進めている。今年度は、イオン液体を用いた有機電界効果トランジスタ、及び酸化物半導体であるInGaZnOを使った電界効果トランジスタの研究を行った。 1、有機電界効果トランジスタに最適なイオン液体の選択 イオン液体に電圧を印可した際に形成される電気二重層を利用した高性能な有機電界効果トランジスタを実現するには、どのような特徴のイオン液体を用いれば良いのかを明らかにするため、系統的にイオン液体を変化させた有機電界効果トランジスタを作製し、その評価を行った。有機半導体に接するイオンを変化させた場合と、有機半導体に接するイオンを固定して、ゲート電極に接するイオンを変化させた場合を比較した結果、有機電界効果トランジスタの電荷移動度は、有機半導体に近接するイオンの種類によらず、正イオン、負イオンの作り出す静電容量に依存することが明らかになった。有機電界効果トランジスタの移動度は、イオン液体の静電容量が下がるにつれて系統的に上昇していき、最大12.6cm2/Vs程度の大きな値をとることがわかった。 2、InGaZnOを使った電界効果トランジスタ 酸化物半導体で省エネが期待されるInGaZnO薄膜を利用して、イオン液体を用いた電界効果トランジスタを作製した。イオン液体を用いることでInGaZnO薄膜電界効果トランジスタの駆動電圧を従来比40%以下に削減することが可能となり、また寿命を2倍以上向上することに成功した。この技術を利用することで透明かつフレキシブルなディスプレーを長時間駆動させることが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、イオン液体と半導体材料の間のメゾスコピック界面を利用した電界効果トランジスタの研究開発をメインに行った。有機電界効果トランジスタに関しては、無限にあるイオン液体の中からどのような指針でイオン液体を選べば良いのか新たな知見を得ることができた。この結果を利用することで、様々な材料を使った電界効果トランジスタを作る際に、イオン液体の選択の指針を与える研究となる。また、すでに実用化されているInGaZnO半導体に関して、イオン液体を用いた電界効果を利用することで低電圧駆動だけでなく寿命を延ばすことにも成功し、実用化へ向けた新たな一歩となる研究である。 研究は当初の計画に沿って極めて順調に進展している。また当初の目標を超える研究の進展も多く得られている。今までは、イオン液体に電圧を印可することで電気二重層を形成していたが、この電気二重層を有機ポリマー中に固定する手法を新たに編み出し、新規デバイス(振動発電素子、電界効果ダイオード)などが、できることが明らかになってきた。これらは本研究の今後の進展や、当初の目標の範疇を超える研究にも大きく貢献すると期待でき、すでに得られている予期せぬ成果と合わせ、最終的には予想以上の成果が得られるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から引き続いて、電気二重層を固定化した電気二重層エレクトレットを利用した新規材料物性探索、及び振動発電素子の開発をおこなっていきたい。また、イオン液体の作り出すメゾスコピック界面の直接観測を放射光施設SPring-8に加えて、新たにKEK-PFを使って進めていくことを検討し、より高分解能に電気二重層が形成されていく様子を観測する予定である。
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