研究課題/領域番号 |
26289002
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
秋庭 義明 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00212431)
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研究分担者 |
小川 雅 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90635236)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 金属物性 / X線 / 放射線 |
研究実績の概要 |
(1) 現有の走査型電子顕微鏡およびX線回折装置に装着可能な,その場観察用負荷装置を新規に試作開発した.負荷にはSEM観察時の電子線走査の障害とならないよう超音波モータを利用した.最大負荷荷重1000Nとしたが,高精度な荷重分解能が必要な場合には,最大荷重容量が500Nおよび200Nのロードセルを装着可能となるようにした.またEBSD測定時には負荷装置を安定して傾斜させる必要があるため,片側引張負荷方式にして装置の軽量化を図り,測定時の信頼性を向上させた. (2) Si単結晶(Siウェハー)の曲げ負荷によってひずみ測定精度を明らかにした.片面に貼付したひずみゲージ値とよく一致することを示し,±2.5E-4程度のばらつきが生じることを明らかにした. (3)汎用性を高めるため,SUS430について検討した.残留応力と系統誤差を除去した後の測定精度は,ひずみゲージの測定結果に対して3%程度の誤差範囲で一致することを示した. (4)3%Si鉄の単結晶を用いて,片側切り欠き材を作製し,負荷過程での切欠き底近傍の応力・ひずみ測定を実施した.試料表面が(011),引張負荷方向が<010>となるように試料を切り出した.弾性範囲内では有限要素法によって得られた解析解とよく一致することを示した.また,塑性変形領域では局所方位差KAMがよい評価パラメタであることを明らかにした. (5)3%Si鉄について,負荷方向を<-101>とした場合について,(4)と同様に検討した.弾性範囲内では本試料についても有限要素解析結果とよく一致した.ただし,塑性変形領域については,<-101>材における最大シュミット因子となるすべり系が,面内変形であるためにすべりトレースが生じにくく,KAMの変化もほとんど表れないことを示した.すなわち,すべり系によっては,KAMは塑性変形評価には適さないことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究の最も重要な項目は,ノイズが少なく,安定した荷重・変位が負荷できる負荷装置の開発であり,本装置の開発いかんによって研究の進捗が大きく左右されることが予想されたが,ほぼ予定通り進行し,当初の予定以上に広範な荷重範囲で測定ができる装置を開発することができた点で達成度は高い.さらに,その精度評価に用いたSiウェハーの曲げ負荷も,目的達成のために期待通りの結果をもたらしてくれた.また,より汎用性を高めるために鉄鋼材料を対象としたSUS430でも同様の結果が得られたことは実用に際して,本手法の有用性を実証するうえで貴重なデータとなった.さらに,切欠き底での応力分布評価では,弾性領域での有用性および精度の確認とともに,適用限界の把握ができた.特に重要な点は,塑性領域では必ずしもKAMが最適パラメータにはなりえないことを示したことは貴重な成果である.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降の推進に際しては,汎用性および実用性の観点から,負荷装置のより詳細な適用範囲の把握があげられる.また,本年度に予定していた純アルミニウムに対する適用性の検討とともに,すべり発生限界の検討を,予定通り実施することが必要である.これまでは,単結晶材料を対象として,比較的実験及び解析が行いやすい材料を用いたが,今後,多結晶材料への適用が本年度の最も重要な検討項目である.そのためには,多結晶材料から,対象とする微小材料の切り出しが重要な課題である.試料作製に際しては,多数の試料を作製した中から目的に適する試料を選択して,実験に供することで対処する予定である.
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