(1)純アルミニウム単結晶の切欠き材に対する負荷過程でのEBSD測定を実施した.弾性範囲内では,Wilkinson法によって切欠き底の応力分布の評価が可能であった.一方,塑性変形領域については,すべり系が面内に限定されるような状況での塑性変形初期においては,KAMの変化は顕著でなかった.さらに塑性変形が発達した場合には,KAM,CI,IQ,GRODが有効であった.塑性変形初期にEBSD法を適用する際には,すべり系と負荷形態に対して十分な注意が必要であることを明らかにした. (2)スポット溶接した部材から切出した三点曲げ負荷によって破壊するときのき裂進展挙動及びき裂進展経路について検討した.試料表面におけるすべり帯発生時のJ積分は,0.03%C材では厚さによらないが,それ以上の炭素鋼においては,厚くなるほどJ積分が大きくなった. 0.2%C材では延性き裂進展であり,ブロック,パケットおよび旧γ粒の内部進展が主であった.同じ炭素量でP量を増加させると境界での進展割合が多くなった.0.5%C材では不安定き裂進展が生じ,各組織単位の境界での進展が主であった.すなわち,不純物元素Pは各領域の境界での強度低下をもたらすことが示唆された. (3)細粒の炭素鋼,細粒のSUS301および通常粒のSUS316NGを対象として,塑性変形量とEBSD,X線パラメータの比較検討を行った.塑性ひずみ増加に伴うKAM,GAMの変化は,粗粒のSUS316NGの変化割合が大きいものの,塑性ひずみの増加傾向とよく対応した.X線半価幅は,SUS301の加工誘起マルテンサイト相の半価幅が,塑性変形の増加とともに低下し,X線法とEBSD法では得られる傾向が異なることが明らかになった.今後,転位密度との関連においてさらに検討の必要があることが示唆された.
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