研究課題/領域番号 |
26289006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ構造 / 強誘電体 / 磁性 / マルチフィジックス特性 / 第一原理解析 / マルチフェロイクス / 薄膜 / ナノワイヤ |
研究実績の概要 |
磁性強誘電体(マルチフェロイクス)のバルク材中の強誘電性と磁性は共存するものの、それらの相互作用は比較的弱く、互いに直線的な性質を有している。ところが、マルチフェロイクスの構造体寸法がナノスケールになると、両物性間に強い非線形相互作用が現れ、渦状やらせん状など特徴的な分極・磁気モーメントが現れる。本研究では、ナノ・マルチフェロイクスの低次元形状に依存して発現する特異な磁性・強誘電性を解明することを目的とする。さらに、負荷ひずみに対する同特性の連動作用(マルチフィジックス)の究明を目指す。
二年目である平成27年度は、まず、(1)ナノ構造を有するマルチフェロイクスに対して力学負荷第一原理解析を実施し、その変形特性を評価した。強誘電分極・磁気による二重らせん構造が現れるマルチフェロイクス・単層ナノチューブでは、ねじり変形に対して、強誘電分極・磁気二重らせんのカイラリティが反転することが明らかになった。また、Ruddlesden-Popper構造を有する層状ナノ・マルチフェロイクスでは、負荷によってIncommensurateな長周期分極・磁性が発現することが明らかになった。これらは、いずれもバルク材に存在する単純な直線状分極・反強磁性秩序とは全く異なるものである。(2)ナノ構造体の原子構造・電子状態について検討したところ、マルチフェロイクスBiFeO3ナノ構造体中の強誘電性はBi-O間の共有結合が、また、磁性はFe-O間に働く超交換相互作用によって支配されていることを明らかにした。(3)こうしたナノ構造体における特異なマルチフェロイクス特性の起源を明らかにするため、構造体内部の反電場等を解析するプログラムを開発し、(4)開発した計算装置に組み込み、調整・最適化を行った。(5)次年度実施するナノ力学モデル構築のため、Phase-Fieldプログラムの開発・改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、(1)ナノ・マルチフェロイクスの負荷解析の実施とマルチフィジックス特性の評価、(2)マルチフィジックス特性の原子・電子レベル機構の解明、(3)反電場等メカニズム解明用のプログラムの開発と(4)その計算システムの構築、(5)ナノ力学モデル構築のためのPhase-Fieldプログラムの開発・改良、である。研究実績欄に記載のとおり、これらの予定項目(1)~(5)はすべて実施し、それぞれの目的を達成している。したがって、本研究は当初予定通り、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、今後の研究の推進方策も当初予定した以下のとおり実施する予定である。 (1)ナノ・マルチフェロイクス構造体中の形状に依存した特有の反電場等を解析・評価する。(2)ナノ・マルチフェロイクスの電子状態を解析し、特異な強誘電性・磁性発現のメカニズムについて検討する。(3)マルチフェロイクスの力学モデルを構築する。(4)力学モデルをPhase-fieldプログラムに実装し、演算装置に実装・調整・解析を行う。(5)研究成果をまとめ、総合検討を行うとともに、将来展望・発展性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、大規模な計算データを保存し、解析するためのデータ保存・解析機器の導入を予定していたが、データ圧縮プログラムにより保存機器が少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度行うPhase-Field解析では、大規模並列計算のための高速通信機器とデータ機器が必要となるため、この実装に用いる予定である。
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