研究課題/領域番号 |
26289009
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪上 隆英 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50192589)
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研究分担者 |
久保 司郎 摂南大学, 理工学部, 教授 (20107139)
塩澤 大輝 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379336)
和泉 遊以 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (60610954)
中井 善一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90155656)
祖山 均 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90211995)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 散逸エネルギ / 疲労 / 熱弾性応力計測 / 非破壊評価 / 破壊力学 / 赤外線計測 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては,昨年度に引き続き「散逸エネルギに基づく疲労き裂発生予知保全」の学術的基盤となる疲労損傷過程での散逸エネルギ放出メカニズムの解明およびき裂先端近傍の応力分布計測に基づくき裂進展評価を重点課題として研究を行った. 疲労損傷過程での散逸エネルギ放出メカニズムの解明においては,昨年度開発した位相ロックイン計測法による高精度な散逸エネルギ評価を可能とし,これを散逸エネルギの発生の抑制効果があると考えられる,ショットピーニングなどの表面処理材や,塑性加工材あるいは溶接試験体に対する散逸エネルギに基づく疲労強度評価に適用した.また,赤外線サーモグラフィによる散逸エネルギの顕微計測法を確立し,試験材料の粗大結晶粒化と相まって,すべり帯の形成・運動による散逸エネルギ放出メカニズムをより高い精度で検証できる可能性が証明された.また,散逸エネルギの顕微赤外線計測に必要な,放射率補正,位置補正に関するノウハウを蓄積することができた. き裂先端近傍の応力分布計測に基づくき裂進展評価においては,溶接構造試験体の疲労き裂進展試験を行い,き裂先端近傍で計測された応力分布およびこれにより算出された応力拡大係数をもとに,き裂進展速度を推定できることを明らかにした.さらに,疲労き裂の進展抑制対策が行われた実橋梁部材を対象に,対策の前後における応力分布をその場計測し,き裂進展対策効果による実働応力軽減を実証できた. さらに,疲労損傷過程での熱弾性応力計測および散逸エネルギ計測を,炭素繊維強化複合材料(CFRP)に適用した.CFRPにおいては,繊維配向角により熱弾性温度変動の位相が大きく変化することが確認でき,これにより疲労損傷の早期検出ができる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究では,新たに赤外線サーモグラフィによる熱弾性応力計測および散逸エネルギの顕微計測法を確立した.これにより,粗大結晶粒試験片による疲労試験時の散逸エネルギを微小視野でその場計測できることが可能となり,すべり帯の形成・運動による散逸エネルギ放出メカニズムをより高い精度で検証できる可能性が証明され,実構造物への散逸エネルギに基づく疲労損傷評価適用の有効性を実証する手がかりを得た.また,き裂先端近傍で計測された応力分布およびこれにより算出された応力拡大係数をもとに,き裂進展速度を推定できることを明らかにするとともに,疲労き裂に対する進展抑制対策の効果を検証できることを示した.さらに,炭素繊維強化複合材料に対しても疲労損傷過程での熱弾性応力計測および散逸エネルギ計測を行った.
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今後の研究の推進方策 |
最終年である平成28年度には,これまでに得られた熱弾性応力計測および散逸エネルギ計測の高精度化に関する種々の研究成果を基礎に以下の研究を実施する.溶接試験片および溶接構造試験体の疲労試験を行い,散逸エネルギ計測に基づく溶接部からのき裂発生予測精度を検証する.また,疲労き裂発生後には,き裂先端近傍で計測された実働応力分布に基づくき裂進展性評価の高精度化について検討を重ねる.さらに,疲労き裂進展後には,疲労き裂進展抑制対策あるいは補修を行い,疲労き裂進展抑制対策については応力低減によるき裂進展性低下,補修については散逸エネルギ計測による疲労き裂再発生評価を行う.これらの検討を通じて,鋼構造物に対するライフサイクルでの非破壊評価法の確立を目指す.研究成果は,国内国外で開催される機械工学,土木工学に関連する諸学会において発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた実験に使用を予定していた試験片について,試験片寸法の変更を計画した結果,当該試験片の納品が年度の会計処理期限内に完了する見込みがなかったため,平成28年度に改めて発注することになった.このため,741,500円を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように,散逸エネルギ計測による疲労損傷評価の実構造物への適用を目指して,平成28年度には溶接構造体の散逸エネルギ計測を実施する.繰り越し分を合わせて,構造体試験片の作製,試験用治具の作製,試験装置改良のための消耗品を中心に研究経費を使用する計画である.
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