研究課題/領域番号 |
26289010
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
仲町 英治 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60099893)
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研究分担者 |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体適合材料 / 細胞周辺環境 / 力学・電磁場 / 軸索伸展 / 神経再生 / 圧電材料 |
研究実績の概要 |
本研究では,生体適合圧電材料MgSiO3(MSOと略記)を用いた神経再生のための力学・電磁場創生デバイスの開発を目指している.本年度は以下に示す成果を得た.(1)コンピュータシミュレーション:フェーズフィールド法に新たに開発したセルラーオートマトン法を融合したマルチレイヤー手法により細胞周辺環境が軸索伸展に及ぼす影響を確認した.(2)ラット由来疑似神経細胞PC12の軸索伸展の基本メカニズム解明用Bio-MEMSデバイスの開発:単および双細胞のパターニングが自由にできる誘電泳動を利用した電極アレイ構造を持つ捕捉用Bio-MEMSデバイスの創製に成功した.軸索伸展のタイムラプス顕微鏡観察が可能な観察システムを完成させた. (3) 生体適合圧電材料による2次元応力・静電磁場負荷装置の作製とPC12による軸索伸展観察:MSOおよびPVDFを用いたユニモルフ型ダイヤフラムを作製した.膜上にPC12を播種し軸索伸展の状態を観察できることを確認した.課題(4)との連成により応力・電磁場刺激が軸索伸展に及ぼす影響を詳細に観察でき,軸索伸展の基本メカニズム解明が可能になると考える.(4) ポールピースによる交流電磁場創生デバイス開発と細胞活性実験:任意の磁場勾配を持つ交流電磁場環境を創生することで,電磁場の平均値および勾配値がPC12細胞の軸索伸展の加速および伸展方向の制御を可能とすることを実験検証した. (5) 力学・電磁場細胞周辺環境創生デバイスの開発とPLA・PGAナノファイバー2層構造神経チューブによるPC12軸索伸展最大化探索:PLAナノファイバーによる2層構造チューブに加えてコラーゲン塗布の複合構造の製作を行った.結論として,PC12への栄養供給の不足が課題となり,本課題克服のために空孔を有するファイバーの成形法の開発および細胞シートおよび細胞チューブの創製を目指すことにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度は50%と考える.以下に主要5課題の達成度を示す.(1)コンピュータシミュレーション:フェーズフィールド法に新たに開発したセルラーオートマトン法を融合したマルチレイヤー手法の開発へと展開ができた.(2)ラット由来疑似神経細胞PC12の軸索伸展の基本メカニズム解明用Bio-MEMSデバイスの開発:単一課題としてはほぼ100%達成できた.今後,課題(4)との連携により,細胞周辺環境および足場が神経軸索伸展に及ぼす影響の解明を目指す. (3) 生体適合圧電材料による2次元応力・静電磁場負荷装置の作製とPC12による軸索伸展観察:単一課題としての達成度は60%であった.MSOおよび今年度採用したPVDFを用いたユニモルフ型ダイヤフラムを作製した.膜上にPC12を播種し軸索伸展の状態を観察できることを確認した.課題(4)との連成により応力・電磁場刺激が軸索伸展に及ぼす影響を詳細に観察でき,軸索伸展の基本メカニズム解明が可能になると考える. (4) ポールピースによる交流電磁場創生デバイス開発と細胞活性実験:本課題の達成度は100%であった.電磁場の平均値および勾配値がPC12細胞の軸索伸展の加速および伸展方向の制御を可能とすることを実験検証した.. (5) 力学・電磁場細胞周辺環境創生デバイスの開発とPLA・PGAナノファイバー2層構造神経チューブによるPC12軸索伸展最大化探索:本課題の達成度は40%程度であった.神経再生用足場として, PLAナノファイバーによる2層構造チューブに加えてコラーゲン塗布の複合構造の製作を行った.PC12への栄養供給の不足が課題となり,本課題克服のために空孔を有するファイバーの成形法の開発および細胞シートおよび細胞チューブの創製を目指すことにした.力学・電磁場細胞周辺環境創生デバイスの開発が最終目標となる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は申請時の予定通り遂行されていると考える.以下に今後の推進方策を主要5課題に関して示す.(1)コンピュータシミュレーション:フェーズフィールド法とセルラーオートマトン法を融合したマルチレイヤー手法により細胞周辺環境を考慮した軸索伸展シミュレーション手法の開発を進める.(2)ラット由来疑似神経細胞PC12の軸索伸展の基本メカニズム解明用Bio-MEMSデバイスの開発:細胞捕捉・細胞パターニングを行うBio-MEMSデバイスの開発はほぼ完成した.今後,課題(5)の細胞周辺環境が神経軸索伸展に及ぼす影響の解明を目指したバイオリアクターの創製を目指す. (3) 生体適合圧電材料による2次元応力・静電磁場負荷装置の作製とPC12による軸索伸展観察:MSOおよび今年度採用したPVDFによるユニモルフ型ダイヤフラムの最適形状設計と試作を進める.昨年度に引続き,膜上にPC12を播種し軸索伸展の状態を観察し,軸索伸展の基本原理の解明を目指す.(4) ポールピースによる交流電磁場創生デバイス開発と細胞活性実験:磁界および電界の任意設定が可能となるバイオ地アクターの試作を進め,次年度以降も本装置による磁界および電界の同時負荷実験による軸索伸展原理の解明を進める. (5)力学・電磁場細胞周辺環境創生デバイスの開発とPLA・PGAナノファイバー2層構造神経チューブによるPC12軸索伸展最大化探索:神経再生用足場として, PLAナノファイバーによる2層構造チューブおよびシートの設計・製作を進める.空孔を有するファイバーの利用を進める.課題(2),(3)および(4)の統合により,応力・電磁場刺激が可能なバイオリアクターを完成し,細胞周辺環境が軸索伸展に及ぼす影響を詳細に観察できると考える.本融合環境負荷デバイスを用いることで,神経軸索伸展の基本メカニズム解明が可能になると考える.
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