研究課題/領域番号 |
26289028
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木之下 博 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50362760)
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研究分担者 |
仁科 勇太 岡山大学, その他部局等, 准教授 (50585940)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / 摩擦 / 摩耗 / 潤滑油 / 添加材 |
研究実績の概要 |
酸化グラフェンはサイズが数μm 以上の一層グラファイト構造であるが,表面(基底面)に非常に 多数の酸素官能基(主に-OH)を有する.そのため水など極性分子への分散性が極めて高い.酸化グラフェンはサイズや酸素官能基密度を制御(デザイン)できる.さらに種々の潤滑に有用な,例えば金属吸着や潤滑性化合物を形成するリンや硫黄系官能基,無極性分子液体にも分散しやすい炭化水素官能基などを導入できる.すなわち目的に合わせて分子設計(デザイン)でき,あらゆる潤滑液体の添加剤として極めて高いポテンシャルを有する. そこで本研究では水,イオン液体,合成油の各々の潤滑液体に最適な酸化グラフェンのデザイン指針(主にサイズ,官能基密度,官能基種)を明確にし,潤滑添加剤としての確立を目指す.本年度は主に水に酸化グラフェンを分散させて摺動特性の向上に取り組んだ。酸化グラフェンは水に分散しやすく、分散性については問題なく行えた.また、酸化グラフェンを水に分散した時の条件として、酸化グラフェンの濃度をパラメーターとした.その結果、酸化グラフェン濃度が0.01mass%でも潤滑性が見られた.これは他の潤滑添加剤が数mass%分散しかければならないのと比べて大きなメリットである.ただ摺動材料として,タングステンカーバイト球とステンレススチール球では高い潤滑性が認められたが、それ以外の組合せでは上記の組合せほどの優位性は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,水分散については非常に高い摺動特性を得ることができた。またこの結果を踏まえ次年度以降のイオン液体および潤滑油基油への分散について、プリリミナルな研究を行った.これらの液体への分散方法であるが,酸化グラフェンが分散している水、および最終的な目的の潤滑液体の両方に混ざる液体を用いる.これによって酸化グラフェンを乾燥させずに単分散のまま目的の潤滑液体に分散させる方法を考案した. このような分散法を用いることによって,イオン液体および潤滑油に酸化グラフェンを分散させ,潤滑性が改善させることを可能とした.このように最も懸念材料であった,酸化グラフェンの各種液体への分散に関する問題点はクリアーでき,次年度以降の研究が問題なく進むことを立証した.
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今後の研究の推進方策 |
[平成27年度以降] イオン液体への分散:イオン液体は液体の塩で,特に宇宙機器などの極限環境での摩擦に応用が期待されている.酸化グラフェンのイオン液体への分散であるが,そのまま分散できる.ただ酸化グラフェン溶媒の水はイオン液体の潤滑性を損なう.それゆえ遠心分離で溶媒をエタノールに置換しイオン液体に分散させる.本研究では摩耗に関する研究と,さらにH+の放出が高い-CO2Hの濃度を高めること,および硫黄系およびリン系の官能基の導入を行う. 研究が計画通りに進まなかった時の対応(イオン液体):上記の方法で,現状のように添加効果がわずかであれば,さらに別な官能基の導入を検討する.例えばイオン液体のアニオンと同じイミダゾリウム基を導入し,分散度を向上させる.酸化グラフェンの官能基,イオン液体ともに自由に選べるので,例え1つが十分な性能でなくとも他の方法で添加効果の向上が可能である. 合成潤滑油への分散:まず極性のエステル系の合成油で実験を行う.具体的にはモノエステル,ポリオールエステルを有する炭化水素系エステル油を用いどのよう条件が最適か見極める.官能基としては,硫黄系とリン系,さらにエステル結合で炭素数16以上の炭化水素基を導入する.次にPAOへの適用を試みる.PAOは無極性分子であり,酸化グラフェンの分散が最も困難と思われる.まず無極性の炭素数16以上の長鎖の炭化水素基を有したアルコールまたはケトンを結合させる.必要な場合は,酸化グラフェンの酸化度の減少も行う.さらに 硫黄系やリン系の官能基の導入も行う. 研究が計画通りに進まなかった時の対応(合成潤滑油):エステル系の潤滑油は問題ないが,PAOには分散が困難と予想される.十分な性能が得られないときは,分散性を高めるため,酸化度を極力小さくし,さらにマイクロ波を照射して酸素官能基を励起させて還元させる方法,界面活性剤の導入も試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,H26年度の研究の結果で実験装置を決定、購入する予定であったが,H26年度の結果だけでは実験装置の仕様が決められなかったため、H27、28年度に先送りしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27、28年度中に実験装置の仕様を決め購入する。
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