研究課題
本年度は,まず「顕微鏡視野下摩擦・変形特性評価システム」の開発を完了した.力学的強度の低い培養組織表面の摩擦特性を評価するには,微小荷重下において高精度な摩擦測定が可能な計測機構が必要となる.本研究では,厚さ0.2 mmのステンレス薄板を用いて2軸カンチレバーを構成し,2軸方向の変位をそれぞれレーザー変位計により高精度に測定することで,試料に与えられる微小荷重と表面で生じる微小摩擦を測定可能とした.また剛性の低いカンチレバーに対する運動用モータによる振動ノイズの影響を回避するため,計測機構と駆動機構の分離・再配置を行った.共焦点レーザー顕微鏡による画像からの組織内部歪み分布の定量には,画像相関法を用いることとした.完成したシステムを用い, 1週から3週まで静置培養した培養軟骨モデルについて,摩擦の評価と組織内歪み分布の定量を行った.まず荷重負荷後の応力緩和挙動から,培養と共に弾性率が上昇し,透水係数は小さくなることを確認した.また摩擦試験の結果,モデル表面の摩擦係数は培養と共に上昇したものの,組織内の歪み分布には明確な影響が認められなかった.これは,静置培養ではコラーゲンを主とする軟骨様組織が均一に形成されたためであり,摩擦を抑制する表層が形成されず,組織形成と共にせん断抵抗が増加し摩擦が上昇したと考えられる.摺動負荷培養実験についても継続して実施した.本年度は再生軟骨モデル試料に対する摺動負荷用ローラの初期押し込み量を変化させた評価を行った.弾性変形を仮定した接触解析により,初期押し込み量を試料厚さの10%から30%まで変化させた際の試料内応力状態を求め,実験結果と比較した.その結果,初期押し込み量の増加と共に試料表面近傍では接線方向の応力振幅が増加し,それによりコラーゲン線維およびグリコサミノグリカンの産生量が増加することが,比色定量と組織観察の両者から確認された.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biotribology
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