研究課題/領域番号 |
26289031
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡部 正夫 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30274484)
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研究分担者 |
真田 俊之 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50403978)
小林 一道 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80453140)
矢口 久雄 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20568521)
藤井 宏之 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00632580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流体力学 / 混相流 / 熱工学 / マイクロ・ナノデバイス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,液滴の固体面衝突後に進展する高速液膜流れの不安定現象に及ぼす周囲蒸気の凝縮効果を明らかにすることである.具体的には,真空チャンバ内を蒸気で満たし,そのチャンバ内で,速度が50m/s程度の液滴を固体面に衝突させ,高速液膜流れを発生させる.周囲気体が非凝縮性気体の場合と比較することにより,液膜流れが安定化するかを検討する. 本年度は固体表面衝突後に形成される高速液膜流れの不安定性現象としてsplashの発生に着目し,液滴衝突速度と周囲気体の圧力を実験パラメータとすることにより,slpash発生条件,特にsplash発生の圧力閾値について検討を行った.真空チャンバ内でコイルガンにより高速で上方に射出された衝突板を,自由落下する液滴に衝突させることにより,自由落下で実現可能な衝突速度よりも高速な液滴衝突を実現した.エタノール液滴を用いて,直径2mm程度,衝突速度5~20m/s程度の条件を実現した.大気下において十分にSplashが発生する程度の衝突速度であっても,減圧することにより,本実験の範囲内では,splashの発生を抑制できることを明らかにした. 次に,液滴衝突における周囲気体の温度が液滴の固体面衝突後に進展する高速液膜流れの不安定現象に及ぼす影響を検討した.周囲蒸気の凝縮効果を検討するためには,蒸気圧力をパラメータとして実験を行う必要がある.蒸気圧力は飽和蒸気圧線図により温度の関数となるので,周囲気体温度を変化させる必要がある.しかしながら,従来の研究では液滴衝突に及ぼす周囲気体温度の影響を調査した結果は皆無であるために,蒸気の凝縮効果を検討する前に,周囲気体温度の効果を検討しなければならない.周囲気体温度の上昇に伴い,splashの発生が抑制されることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで,高速液滴はほとんどが大気圧雰囲気下で行われており,10m/sを超す衝突速度を有する液滴衝突を観察した報告は存在しない.本実験の特色は,気体雰囲気を制御可能な真空チャンバ内で高速液滴衝突を観察する点にある.電磁力を駆動源とするコイルガンを用いることにより,真空チャンバ内での高速液滴衝突実験装置を構築し,真空環境下での高速液滴衝突実験を行うというオリジナルなアイデアを実現し,エタノール液滴を用いて,直径2mm程度,衝突速度5~20m/s程度の条件を実現したことは,本年度の重要な成果である.
また,真空チャンバ内での液滴生成過程において,従来の液滴発生機構では,低圧力下において液滴内部に気泡が混入し中空液滴が生成されてしまったが,液滴発生部を再構築することにより,周囲気体圧力が数kPaであっても安定に中実液滴を生成することに成功した事は,本年度の重要な成果である.
これまで,当研究室で行われた高速液滴衝突実験は,高速で射出された衝突板を自由落下する液滴に衝突することで行われてきた.しかしながら,例えば洗浄装置の実機であれば,固体表面は静止し高速で液滴が衝突する.そこで,本年度は高速微小液滴射出装置の開発に着手した.研究計画書では,パルスレーザーを集光し,液体で満たされた微細管内に照射し,微細管内部でレーザー誘起気泡を発生させ,この気泡により発生する衝撃波が気液界面に到達すると,高速液体ジェットが形成され,先端より液滴が離脱し射出される機構の装置を企画したが,研究経費が限られていること及び安全性・制御性を考慮し,再検討を行った結果,積層圧電アクチュエータ,高精度シリンジ,高精度針を用いることにより,衝突速度が20m/s程度まで到達可能な高速微小液滴射出装置の開発に成功した.これは本年度の重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度で構築された装置を用いて,蒸気中の高速液滴衝突を観察し,液膜進展速度,液膜先端部形状,液糸数/成長速度を計測し不安定性現象を定量的に評価し,実験結果を比較検討し周囲気体速度効果を考察する. 1.蒸気中の衝突後の液滴ダイナミクスの観察: 蒸気としてエタノールを用い,約70℃,60kPa程度で実験チャンバ内部環境を設定し,高速エタノール液滴衝突実験を行う.周囲気体が凝縮する場合には不安定性が抑制されるかを実験的に検証する.また,真空中および低圧力中での実験結果と比較検討する事により,周囲気体雰囲気により発生する不安定性現象の要因となる物理過程に関して考察する.特に,前年度成功しているコイルガンの多段化をさらに発展させると共に衝突板形状を検討することにより,より高速で安定な衝突現象を実現し,スプラッシュ発生限界の知見を拡大する. 2.真空チャンバ内液滴射出装置を用いた高速微小液滴衝突:液滴および液柱が高速で固体表面に衝突する場合の,固体面衝突後の液膜流れの不安定性現象に及ぼす周囲気体圧力および周囲気体の凝縮効果について調査する.そのために,前年度構築した液滴射出装置が真空チャンバ内で使用可能となるように,新たに真空チャンバを作製しシステムを改良する.特に,液滴列と液柱とにおける衝突現象の相違を検討することにより,液滴衝突時における液膜の役割について知見を得る. 3.異なる接触角を有する固体表面への液滴衝突の観察:プラズマ表面改質装置を用いることにより,液滴と固体表面との接触角を制御することに前年度成功している.異なる接触角を有する固体表面への液滴衝突および衝突後の流れ,特に液滴衝突直後のマイクロジェットと呼ばれる流れを詳細に観察することにより,不安定性現象発生の初期過程について解析する. 特に,液滴衝突直後に着目し,エアクッションの効果と接触角の効果について詳細に検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度当初計画では,パルスレーザーを用いた高速微小液滴発生装置を開発する予定であった.しかしながら,研究経費が限られていること及び安全性・制御性を考慮し,再検討を行った結果,積層圧電アクチュエータ,高精度シリンジ,高精度針を用いることにより,衝突速度が20m/s程度まで到達可能な高速微小液滴射出装置の開発に計画を変更した. しかしながら,特に制御性に未だ不十分の点があり一層の改善・改良を必要としている.また,高速微小液滴射出装置が未完成であるために,この新しい高速微小液滴射出装置を設置する予定の真空チャンバおよび実験制御機構等についても未だ不十分の点があり,一層の改善・改良を必要としている.そのため,実験装置制御機構開発費及び真空チャンバ開発費等が未使用であるため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度開発した高速微小液滴射出装置は,積層圧電アクチュエータ,高精度シリンジ,高精度針を用いて構成されている.大気圧下では,その動作性が確認されているが,制御性が不安定であるために,特にシリンジ・高精度針の組み合わせを詳細に検討する必要がある.制御性を向上させるために,次年度使用額の一部を使用する .また,この高速微小液滴射出装置は,真空チャンバ内で使用することを目的として設計・開発しているものである.そのため,実験システムの自動化が必要不可欠となっている.そのため,実験装置制御機構の開発のために,次年度使用額の一部を使用する. さらに,自動化システムが構築されて初めて,真空チャンバの設計・開発が可能となる.実験の段階に応じてシステムが可変となる自由度の高い真空チャンバの開発のために,次年度使用額の一部を使用する.
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