研究課題/領域番号 |
26289032
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
折原 宏 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30177307)
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研究分担者 |
佐々木 裕司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00649741)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソフトマター物理 / せん断流 / ブラウン運動 / マイクロレオロジー / 高分子 / 非ニュートン流体 |
研究実績の概要 |
高分子鎖からなる高分子溶液のようにミクロな構造を持つ流体においては流動下において構造が変化するため、静止状態近傍で摂動として外力を印加したときの線型応答(複素粘性率)だけではそのレオロジー特性を完全に表わすことができない。本研究では、従来のマイクロレオロジーの手法を流動がある場合に発展させ、流動下の複素粘性率の測定法を確立するとともに、これを用いて高分子溶液から生体物質までの流動下における複素粘度を求め、非ニュートン流体における非線形レオロジーの個別性と普遍性を解明することを目的とする。今年度は、せん断を印加する装置を製作し、これを共焦点レーザー顕微鏡に取り付け、せん断流下で微粒子のブラウン運動を観測できるようにした。まず、水を試料として、その中での運動を測定したところ、せん断流下においては粒子の位置の平均自乗変位が時間に比例する通常の拡散に加えて、時間の3乗に比例する異常拡散が明瞭に観測された。これにより今回製作した装置は目的を達成するための十分な性能を有していることが確認された。次に、せん断を印加すると粘度が低下する(シアシニング)キサンタンガムにおいて測定を行なった。無せん断下では平均自乗変位は粘弾性流体に特徴的な振る舞いを見せたが、せん断流下においては平均自乗変位が異常に大きくなることが分った。この増大はせん断流下で高分子が微粒子に衝突して起こる非熱的ゆらぎに起因するのではないかと考えられる。平均自乗変位から粒子の速度相関関数を求めたところ、無せん断流下では負の時間相関があるのに対して、せん断流下では正の時間相関が現れることが分った。今後は、この正の時間相関の起源を明らかにするとともに測定対象を生体物質等に広げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はせん断流下においてマイクロレオロジー測定のできる装置の製作が主な課題であったが、ほぼ完成し、性能試験も行ない良好な結果が得られた。さらに、高分子キサンタンガムの測定に着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
計画どおりに装置が完成したので、種々の高分子、さらには生体物質のせん断流下におけるマイクロレオロジー測定を行ない、これらの流体の非平衡非線型レオロジーを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に購入を予定していた試料が他の試料の測定に時間がかかったため次年度購入することにした。試料は蛍光色素であり、劣化を避けるため、できるだけ測定の直前に購入し使用することにしている。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度購入を見送った試料を次年度購入する。
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