研究課題/領域番号 |
26289033
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坪倉 誠 神戸大学, その他の研究科, 教授 (40313366)
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研究分担者 |
中島 卓司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40444707)
大西 慶治 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (90650036)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流体工学 / 空気力学 / 車両空力 / ラージエディシミュレーション / シミュレーション工学 |
研究実績の概要 |
「課題(2)非定常空力に着目した抵抗低減戦略の提案」として、昨年度得られた知見をもとに、抵抗値の非定常変動と流れ場の関係に着目した解析を行った。これまで得られた知見から、低抵抗時と高抵抗時では車体後部の後引き渦に大きな差異が観察され、特に高Cd時には左右で大きな非対称性が発生することを確認している。このCd変動はおよそ数Hzの周期で比較的規則的に発生し、後引き渦の不安定モードと強い関係がある上、車体サスペンションシステムの固有振動数とも近いことから、走行安定性にも寄与することが示唆されている。本年度は、この後引き渦が車両空力性能に大きな影響を与えるセダン型車両を対象として、高速走行時の外乱としてピッチ加振した際の車両周り渦構造の変化に着目した解析を行った。具体的には、サスペンションシステムと同じ固有振動数の流れ現象に着目し、昨年度開発したモード解析法(Direct Mode Decomposition, DMD)を適用することで、高速走行安定性に大きく寄与する流れ構造の抽出を行った。「課題(4)履歴効果を伴う非線形空力入力時の安定性評価手法の開発と流れメカニズムの解明」として、横風突風解析を行った。急な車体姿勢の変化や追い越し・すれ違い、横風突風が車体に作用した場合、車両周辺の気流が急激に変化し、翼失速に類した過渡特性や履歴効果が発生する。本年度は特に、「横風突風」を対象として、ドライバーの操舵応答も考慮した車両6自由度運動と大規模LES解析の連成解析システムを構築し、実車形状に対して突風時の自動車挙動予測を行った。基準車両形状と、空力操安性の向上が確認されている改善車両形状を比較し、車両運動性能向上に寄与する流れメカニズムの解明を行った。特に車体表面からの突発的な境界層剥離とそれに伴う縦渦の非定常変動に着目し、走行安全性に寄与する空力ピッチ・ヨーモーメントの変動との関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度実施予定であった「研究課題(5)戦略的流れ最適化手法の構築」について、能動的数理制御モデルの導入を前倒しで進めた。具体的には流れを制御する流体吹き出し素子としてプラズマアクチュエータに着目し、その挙動の数理モデルをシミュレーションシステムに導入し、簡易セダン形状を対象としてその検証を行った。プラズマアクチュエータを用いた自動車空力実験は広島大学がマツダと連携して行い、数値シミュレーションは神戸大と理研が担当した。セダン型車両を模擬した単純形状モデルに対して、能動的な流れ構造の制御による空気抵抗低減を目指して、車体後端側面から車体後流への流れ構造に着目し、車体側面での剥離制御を目指した。先ずは既報の単純翼形状を対象に、実験や高精度差分で得られている結果を再現するために必要な格子解像度や数値スキームのチューニングを行った。次に実際のプラズマアクチュエータを用いた簡易車両風洞実験を行い、その流れ制御の有用性を検証すると共に、数値シミュレーション検証用のデータ(車体空力及び車両周り流れ構造)を取得した。得られた結果を数値シミュレーションの結果と比較し、その妥当性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に対して、順調に研究は遂行しており、研究計画に大幅な変更はない。最終年度となる平成29年度は、平成28年度にスタートさせた「課題(5)戦略的流れ最適化手法の構築」等を加速させ、具体的な最適化手法の提案を目指す。最終的に、どの程度実車に近い形状と走行条件で、その有用性を検証できるかが、大きな課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理研で当初予定していたデータ保存用のメディア(消耗品)の購入が来年度に延期になった。理由は、広島大学で実施した実験データと整合性を合わせるために、大規模計算の実施が年度末にずれこんだため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ保存用メディアは、H28年度早々に購入する予定である。
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