研究課題/領域番号 |
26289037
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶島 岳夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30185772)
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研究分担者 |
竹内 伸太郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50372628)
大森 健史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70467546)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 流体工学 / 混相流 / 乱流 / 粒子 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
高濃度分散二相乱流に対する工学的に実用性の高い数値シミュレーション手法を確立するため、低濃度系に対する従来の乱流変調モデルとは異なるサブグリッド粒子粘性モデル・サブグリッド粒子熱輸送モデルの構築を目的とした研究を行っている。本計画では、血液中の赤血球の体積率を目安として50%程度を目安に、高濃度で存在する粒子群とその間の狭隘な領域の流体による運動量、熱および物質移動の解析を実現することを目標としている。 平成27年度は、4年計画の前半として平成26年度に引き続き、分散二相乱流の直接数値シミュレーションを実施し、流れの中で非定常に並進および回転運動する粒子群と周囲流体の相互作用、乱流場での粒子による熱輸送に関するデータ解析を計画した。同時に、高濃度粒子群を扱うための固体間狭隘流路の流動モデル、高レイノルズ数二相流における粒子周りの境界層に対する高解像度解析の手法の検討を進めた。 分散二相乱流に関しては、平行平板間の自然対流による固液二相熱流動を対象に、平成26年度に開発した手法を三次元計算に拡張した上で計算の効率と安定性を改善し、単一分散球形粒子群については当初の目標(体積率50%)を上回る高濃度分散二相流解析を実現した。 モデル化のための素過程の解析も同時に推進するとともに、単相乱流の解像度に近い径をもつ粒子の周りの流れをモデル化することを試み、4年計画の後半の推進のために有用な分散二相乱流の直接数値シミュレーションの支配方程式の確立の見通しを得た。 また、非球形粒子や可変形粒子、高濃度や高レイノルズ数条件の扱いを可能とすべく、柔軟構造物の計算領域への埋め込み、粒子間の狭隘部への潤滑方程式の解の埋め込み、任意多面体による非構造格子法などの手法開発もそれぞれ推進し、高濃度分散二相流の解析コードに組み込むための要素技術を高度化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度分散二相流のモデリングに用いるデータを取得するための直接数値シミュレーション技術の確立という研究計画前半の課題に対しては、三次元で数千個(体積率54.7%)と、均一サイズの球形剛体粒子に関しては目標を達成した。これにより、流体と異なる熱伝導性をもつ固体の混入にともない、伝導効果による熱伝達制御、流動抵抗による熱伝達抑制の双方が発現する広範な条件での固液二相熱伝達の解析を可能とし、今後に向けての基盤技術を確立できた。また、固体粒子の混入率が高くなることにより、粒子どうしの接触や近接粒子間の流体膜を介した運動量および熱の伝達の影響が極めて大きくなり、本研究で着目するパラメーターの重要性を確認することができた。 シミュレーションの高精度化・多機能化については、本研究グループ内で同時に推進されている研究と連携して以下の各項目を検討している。固体間の狭隘な領域での流体のふるまいに対する格子解像度不足に対処するため、潤滑方程式の解を粒子間の狭隘部に埋め込む方法を作成し、近接する一対の粒子の相互作用問題で検証を行った。また、任意多面体で構成される非構造格法を考案し、界面形状の再現性、移流による保存特性の検証を行い、大変形する柔軟構造物を扱う要素技術を発展させた。さらに、乱流場における粒子運動のモデル化のため、球形粒子の周囲流による揚力・抗力およびモーメントに対して、流線曲率をベースパラメーターとして統一的に整理できることを見いだし、粒子の後流の形状に対しては渦度だけでなく流線曲率の効果を明らかにした。さらに、単相乱流に必要とされる解像度に近い粒子径を扱う方法の検討が進み、大規模または複雑形状の流れ場に適用範囲を拡大できる見通しを得た。以上の成果は、本研究計画の後半において高濃度分散二相流のシミュレーションに適宜統合される予定であるが、各要素技術の開発は順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は、前半(平成26~27年度)で大規模シミュレーションの実施とデータ解析に基づきモデリングの基本的な考え方の確立、後半(平成28~29年度)で分散二相乱流のサブグリッドスケールモデルを用いた現象解析に大別される。モデルは、粒子に対しては質点モデル、乱流に対してはLarge-Eddy Simulationが想定され、粒子自身もその周りの流れもサブグリッドスケールにあるとする。したがって、この枠組みでのモデル構築に必要なデータの収集と解析を予定どおり進める。 研究計画の前半(平成26~27年度)に実施した高濃度分散二相乱流に対する大規模な直接数値シミュレーションについては、当初の目標であった粒子体積率50%以上を達成したので、大規模な数値計算を実施して乱流統計量ならびに粒子と流体の相互作用に関するデータを取得する。乱流統計量に関しては、流体だけでなく、粒子の並進運動と回転運動に伴う運動量と熱の流束を詳細に解析する。今年度は、これにローパスフィルター操作を施して、本研究の対象であるサブグリッド粒子粘性やサブグリッド粒子熱輸送を定量的に明らかにし、構想するモデルを評価できるデータベースを整える。 加えて、後半の1年目に当たる平成28年度には、分散相の形状や力学特性の影響の調査に着手する。具体的には、本研究と同時に開発してきた高精度境界埋め込み法、移動界面の追跡法を用いて非球形粒子、柔軟粒子(不溶性2流体も含む)の取り扱いを試みる。その際、特に高濃度系に対応するための粒子間狭隘流路の潤滑理論解の埋め込みを導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハードウェアのデータメンテナンスを発注したが、業者側で不具合の解析に日数がかかり、年度内に作業が終了しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
蓄積された計算結果について、ソフト的にメンテナンスして維持するか、ハード的な更新により補強するかは上述のシステムの解析の結果に依存するが、いずれにしても大規模データベースの管理のために当該予算を充当する予定である。
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