研究課題/領域番号 |
26289040
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
瀬川 武彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 省エネルギー研究部門, 主任研究員 (50357315)
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研究分担者 |
松沼 孝幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 省エネルギー研究部門, 主任研究員 (40358031)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマアクチュエータ / 誘電体バリア放電 / 漏れ流れ / タービン / 環状翼列 / 流体制御 / 漏れ渦 / 流れの可視化 |
研究実績の概要 |
ターボ機械のエネルギー効率を飛躍的に向上させる技術の確立に向け、申請者らが考案したリング型プラズマアクチュエータを用いて環状タービン翼列先端とケーシングの隙間に発生する漏れ流れを抑制するための研究開発を実施する。これまで、タービン翼列先端2次元モデルおよび3次元モデルを構築し、ケーシング部内壁に着脱可能なリング型プラズマアクチュエータを開発してきた。サファイアガラス基板上にイオンプレーティングにより櫛歯形ITO電極が形成された多線透明電極を用いたリング型プラズマアクチュエータを2次元モデルに装着し、印加電圧条件や漏れ流れに対する電極の配置角度の違いによる漏れ流れ抑制効果について、粒子画像流速測定法(PIV)により明らかにした。また、3次元モデルに適用可能な絶縁被覆電線を用いて構築した2次元モデル用リング型プラズマアクチュエータでは、絶縁被覆電線とタービンを模擬した平板との配向やエッジ形状の違いが漏れ流れに与える影響を調査し、特定の周波数において漏れ流れの90%以上を抑制することが可能となった。また、先端面に対して単段の凹凸構造を施した平板モデルでは、エッジの端面形状により漏れ流れ抑制効果が変化し、両端面形状が対称の場合に制御効果が向上する結果を得た。 3次元モデルでは、曲面場に対してリング型プラズマアクチュエータを構築するための試作を行った。曲面場に溝構造を施す場合、従来の機械加工ではタービンブレードと同軸の溝構造の採用に限定される。そこで、3次元プリンタを用いた金属製溝構造とコーティング技術を組み合わせた新しいプラズマアクチュエータの作成法の検討を行い、セクター化されたリング型プラズマアクチュエータの構築が可能となった。また、金属部に対する絶縁コーティング層の耐久性を向上させるための多くのノウハウを獲得し、プラズマアクチュエータの連続運転による制御効果を検証が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、タービン翼列先端2次元モデルおよび3次元モデルを構築し、ケーシング部内壁に着脱可能なリング型プラズマアクチュエータの試作に成功している。制御効果の検証実験では、効果の違いを見極めるためにリング型プラズマアクチュエータを連続稼働させる必要があり、プラズマアクチュエータの耐久性を向上させる必要があった。初期に開発したリング型プラズマアクチュエータではシリコン樹脂により被覆されたワイヤを用い、数多くの耐久性試験を実施したため、3次元モデルにおける性能評価試験でも十分な稼働が見込める半面、設置パターンの多様化には難点が多いことが明らかになった。そこで、様々な電極パターンが形成された金属表面への絶縁コーティング技術が重要である。しかし、現状の絶縁材料ではシリコン樹脂被覆ワイヤと比較して耐久性が極端に低く、新たなコーティング材料や耐久性を向上させるための表面改質を行うことが必要であることが明らかになった。これらの技術的課題に対しては平成28年度に新しい対策技術の試みを計画しており、最終的な研究目標に対して十分達成可能な進捗状況であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
タービン翼列先端2次元モデルでは、先端面微細構造や壁面側に設置した電極構造の多様化を進めることで、制御効果を向上させるための条件を見出す。また、リング型プラズマアクチュエータの低消費電力化を実現するため、引き続き入力電圧波形の最適化や静電容量の低減を図る。絶縁被覆材量の耐久性を向上させるためには、耐コロナ性にすぐれた材料を選択する必要があるため、これまで実績のあるセラミックやシリコン樹脂に加え、テフロンやPEEKなどの高分子膜のコーティング技術を用いたアクチュエータの試作を行う。 タービン翼列先端3次元モデルの構築に向けては、曲面場に対して脱落等の危険性が低く、高耐久性を有するリング型プラズマアクチュエータを構築できるかが継続的な課題である。そこで、2次元モデルで得られた知見を3次元モデルに適用し、金属材料の3次元造形や緻密な絶縁被膜コーティング手法などの先端技術を採用し、制御効果が検証可能な稼働時間が見込める高耐久のリング型プラズマアクチュエータ作成技術を確立する。制御効果の検証には、リング型プラズマアクチュエータによる微小な流れの変化を獲得するため、PIVだけでなく多チャンネル圧力スキャナを用いて圧力変動計測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
リング型プラズマアクチュエータを駆動するための電源を多チャンネル化する計画を進めていたが、試作した電源の出力電圧特性の把握に時間を要した。特に、実際に使用するリング型プラズマアクチュエータの静電容量に応じて波形が変化する可能性があり、今後も継続して開発を行っていくプラズマアクチュエータに対しても対応可能な電源仕様を見極める必要があるため、本年度は1chの試作に留めた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度以降に開発する3次元モデル用のリング型プラズマアクチュエータの静電容量に適用できる電源の仕様決定に向け、新たに高電圧スイッチを用いたパルス電源の試作を行い、プラズマアクチュエータの多チャンネル化を図る。また、現在まで採用してきた絶縁コーティング被膜では連続駆動による耐久性に課題が残されているため、新しいコーティング材料や表面改質をおこなうために活用する予定である。
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