研究実績の概要 |
本年度は,2種類の実験(weak flameの観察と化学種計測)を行った.内径2mmの石英管をリアクタとして用い,当量比1のn-ヘプタン/空気予混合気をリアクタに供給した.軸対象かつ低勾配の温度分布を得るために,鉛直型のリアクタを用いた.外部熱源である水素バーナに供給するガスの組成を変えることで,リアクタ内壁の最高壁面温度を700~1300 Kの範囲内で調整した.分離された定常冷炎の化学構造を調べるため,分離定常冷炎を得るのに最適な最高壁面温度を探ったのち,リアクタ出口において化学種計測を行うという手順をとった.リアクタ出口部で,電子イオン化法による飛行時間質量分析計(TOF/MS)を用いてガス分析を行った.数値計算には一次元定常計算コードPREMIXをベースとし,エネルギー方程式に気相と壁面の熱伝達項を加えた計算コードを用いた.MFRの分離定常冷炎に関して,反応機構の再現性を調べるために,3つの反応機構,ここではKUCRS, LLNL, MFLを用いて数値計算を行った. まず最高壁面温度1300 Kにおいて,実験によって得られた当量比1のn-ヘプタン/空気混合気の火炎画像とKUCRS mech. を用いた数値計算によって得られた火炎構造の比較を行った.実験における3つの微弱な化学発光が存在する温度域と,数値計算において,発熱速度のピーク位置で定義される複数のweak flameが存在する温度域はよく一致することが確認された.さらに定在冷炎のみを安定化させるため,最高壁面温度を700 Kとしてさらに実験及び数値計算を行った.その結果,ひとつの化学発光を実験によって確認すると共に,当該温度域において数値計算におけるweak flameの存在が確認され,両者がよく一致した.この冷炎を対象に,詳細な化学種計測を行った. これにより分離定常冷炎を実現し,その化学構造を同定するという研究目的が達成された.
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