アルミナ,シリカおよびダイヤモンドの3種類のナノ粒子を懸濁させたナノ流体について,粘度および熱伝導率を計測した上で,等熱流束下での強制対流熱伝達の実験を実施した.事前に,実験系の精度を確認する意味から,純水について,完全発達層流および乱流に関する熱計測を実施した.その結果,それぞれ,Shahの式およびBittus-Boelterの式と非常に良い一致を示すことが分かった.引き続き,ナノ流体の異常伝熱促進(Anomaly)と発泡アルミの機械的分散(Mechanical dispersion)の相乗効果を検討すべく,発泡アルミを円管路に充填した場合について伝熱促進の観点から実験的検討を行った. 熱伝導率の計測より,体積分率1%にあっては,アルミナのナノ流体の熱伝導率増加率が6%と一番高く,一方,ナノ粒子の熱伝導率が高いダイヤモンドについては熱伝導率増加率が2%に留まることが分かった.このことは,ナノ流体の熱伝導率はナノ粒子の熱伝導率や体積分率のみならず,粒子形状や平均径などにも複雑に依存することを意味している. また,今回の実験系においては,異常伝熱促進効果を,機械的分散による伝熱促進と分離した形で確認することはできなかった.これは,多孔質体充填管路では機械的分散による伝熱促進効果が卓越することによる.しかしながら,ナノ粒子を懸濁させることによる熱伝導率の増加により,より高い熱伝達率が得られることが判明した.これは,ナノ流体の機械的分散係数に関する微視的計算に基づく数値実験式が純流体のそれとほぼ同一となるいう本研究室のZhangの博士論文の結果とも整合している.
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