研究課題/領域番号 |
26289048
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河野 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50311634)
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研究分担者 |
塩見 淳一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40451786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 相変化材料 / 熱伝導率 / グラフェン / カーボンナノチューブ / カーボンナノホーン |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きナノーカーボン材料を添加することによる相変化材料の熱伝導率向上の実験を行ったが,今年度は得られた結果と有効媒質理論による計算結果との比較検討を中心に行い,熱輸送機構に関する検討を行った.実験ではカーボンナノホーン,多層カーボンナノチューブ,グラフェンナノシートを相変化材料に添加するナノカーボン材料とし,これをラウリン酸ベースの相変化材料母材と混合しナノカーボン複合材料とした.材料が固体状態での熱伝導率の向上率は材料の添加割合が1 vol%とした際に,グラフェンナノシート,多層カーボンナノチューブ,カーボンナノホーンの順に224 %, 172 %,27 %の順番であり,グラフェンナノシートが一番効果的であった. 一方,材料が液体の状態であればグラフェンナノシート,多層カーボンナノチューブ,カーボンナノホーンの順に39 %, 19.8%, 4 %の順であった.個体の場合と比較して熱伝導率向上率が低い. 昨年度の研究で,界面熱コンダクタンスが複合材料の熱伝導率向上を大きく左右することを示唆する結果が得られていたが,これらのナノカーボン材料を用いたナノカーボン複合材料におけるナノカーボンと母材の界面熱コンダクタンスの相関を有効媒質理論による計算にて検討した.その結果,固体の場合と液体の場合でナノカーボン材料と相変化材料母材の界面熱コンダクタンスを比較すると,個体の場合は液体と比較してその値が一桁ほど大きく,界面熱コンダクタンスを考慮することで実験結果が説明出来る.またグラフェンナノシート,多層カーボンナノチューブ,カーボンナノホーンと母材の界面熱コンダクタンスと複合材料の熱伝導率を比較した結果,熱伝導率向上効果がある材料ほど界面熱コンダクタンスが大きいことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は得られた結果と有効媒質理論による計算結果との比較検討を行い,ナノカーボンと母材の界面熱コンダクタンスがナノカーボン自体の熱伝導率や形状より,相変化材料の熱伝導率向上に大きな影響を与える因子であると提案することが出来た.本成果は下記の国際会議で招待講演として発表した. 招待講演"Enhanced Thermal Conductivity of Phase Change Nanocompsite in Solid an Liquid State with Single-Walled Carbon Nanohorn Inclusions", Sivasankaran HARISH, Daniel OREJON, Yasuyuki TAKATA, Masamichi KOHNO. 3rd International Workshop on Heat Transfer Advances forEnergy Conservation and Pollution Control, October 16-19, 2015, Taipei, Taiwan また来年度の過渡吸収計測実験の準備も進んでおり,大きな支障なく実験に取りかかれる状況である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験的研究と有効媒質理論に基づく計算から,ナノカーボンと母材の界面熱コンダクタンスがナノカーボン自体の熱伝導率や形状より,相変化材料の熱伝導率向上に大きな影響を与える因子であると提案した.本年度は実験的にもナノカーボンと母材の界面熱コンダクタンスを計測し,我々の提案を確固としたものとする.グラフェンナノシート,多層カーボンナノチューブ,カーボンナノホーンをそれぞれ水やエタノール等の溶液に分散し,可視・赤外領域の吸収スペクトルを取得し,ポンプ・プローブ過渡吸収分光の基礎データとする.その後にナノカーボンが添加された複合材料でポンプ・プローブ過渡吸収分光の適用を行い,ナノカーボンと母材界面における界面熱コンダクタンスおよび複合材料の熱伝導率を計測し,界面熱コンダクタンスが材料の熱伝導率に与える影響を明らかにする. また上記に加えて環境制御型SEMによる相変化観察も行う計画である.これまでの研究で,添加されるナノカーボンの構造や母材を固化させる時間が材料の微細構造に大きく影響することが分かっている.今年度はより鮮明な画像撮影を試み,ハイブリッドナノカーボン等が添加された相変化材料の画像撮影を行う計画である.  
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究費で参加予定であった国際会議(PRTEC:環太平洋熱工学会議)を学内経費でまかなうことが出来たので,参加費・旅費と併せて40万程度の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
吸収測定用の光学部品および国内学会での成果発表に使用する計画である.
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