研究実績の概要 |
今年度はナノカーボンを添加した相変化材料の実用化を見据え,実際の熱交換器にナノカーボン複合化相変化材料を適用した際の伝熱シミュレーションを中心に研究を進めた. 熱交換器は円筒状のシェルアンドチューブ型とし,相変化材料に添加するナノカーボンはグラフェンとした.またグラフェンを添加した相変化材料の有効熱伝導率は有効媒質理論によって計算した.なお本研究における実験で今回適用した有効媒質理論の信頼性が高いことは確認済みである.相変化材料は有機化合物であるエイコサン(C20H42)として,純粋な相変化材料(グラフェン未添加),グラフェンを体積割合でそれぞれ1%,2%添加した材料で比較検討を行った. 相変化材料が熱交換器内で溶融に要する時間を検討した結果,熱交換器入口温度を50℃とした場合,グラフェンを1%添加した材料では純粋な相変化材料と比較して22%短縮されることが分かった.入口温度が60℃の場合、純粋な材料では溶融時間が221分であるのに対して,1%添加した材料では173分に,2%添加した材料では138分に,3%添加した材料では119分まで溶融時間が短縮された.グラフェンなどを相変化材料に添加すると,粘性係数の増加や潜熱の減少(グラフェンを2%添加すると潜熱が5%減少)するなど,必ずしも蓄熱材として有利な方向に働かない現象も見られるが,材料の熱伝導率が向上(グラフェンを2%添加すると熱伝導率が40%増加)する効果が大きく,結果的に熱交換性能を向上されられると考えられる.
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