研究課題
本年度は刺繍技術を応用したファイバー縫付機を新規に導入し,また実験室レベルで真空樹脂含浸製(VaRTM;Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)法により複合材を作成するシステムを構築した.これらの手法で作成した複合材の弾性率測定など,基礎的なデータ収集を行った.具体的には,ファイバー縫付機で繊維層を積層する場合,繊維束を配置する箇所を工夫し,前層とは半幅ほどずらして積層することで繊維含有率を高めることが可能であることがわかった.また,繊維を縫付ける基材が作成後の試験片の弾性率に少なからず影響を与えることが分かった.VaRTM法を実施するにあたり,樹脂は硬化剤により常温で降下する不飽和ポリエステルを採用した.樹脂の含浸する際,クロス材などは比較的スムーズだが,一方向材や多積層材の場合はクロス材と同様にしてもうまく樹脂が含浸していかないことがわかった.そのため,樹脂拡散メディアや剥離用シート(ピールプライ)などを複合材表面に部分的に配置するなどの工夫を実験的に行うことで効率的な含浸方法を考案した.以上の方法により一方向強化材を作成し,引張試験により材料定数を計測した結果,繊維方向,垂直方向のヤング率はおおよそ90GPa,6.5GPa程度であり,繊維含有率は40%程度であることがわかった.上述の通り板断面積に占める基材の割合が大きく材料定数に影響するため,より薄い基材やガラスやカーボンクロス材を基材として採用するなどの工夫が必要であることがわかった.また,双安定性を有する複合材シェルに関して,双安定性を示す臨界温度と両安定形状間の平均変位量の二つの相反する目的関数に関して,効率的に探索が行なえる多目的最適化アルゴリズムを考案し,実行した結果,広範囲に渡った非劣解群を算出することができた.以上の結果を学術論文としてまとめ投稿した.
4: 遅れている
申請者自身の海外研修による不在と,ファイバー縫付機の納品が12月まで遅れたため,予定していた実験が十分に実施できなかった.
当初計画より研究の進展が遅れているため,今年度は前年度に実施予定だった研究計画を一部繰り越して実施する.具体的には,ファイバー縫付機により作成した曲線部を有する複合材の実験結果より詳細な材料定数を取得する.本研究で作成する複合材は曲線部を有しているため,同一層内でも繊維含有率や板厚に起因する弾性定数などの力学特性が変化する.そのため様々な曲率を有する試験片を作成し,繊維含有率を計測することで,曲率と含有率または局所的な剛性の間にある関係を実験により明らかにし,実験式として数値計算や繊維形状最適化問題に組み込む.また,前年度の実験結果より繊維を縫付ける基材も試験片の剛性に大きな影響を与えるという課題が判明した.今年度は出来るだけ薄い基材やカーボンやガラスなどのドライクロスに繊維を基材として採用するなど,基材の影響を出来るだけ抑えられる工夫をする.曲線状繊維を有する複合材の最適化問題の解法として,これまで離散変数のみを扱う多目的遺伝的アルゴリズム(GA)を用いていたが,曲線状繊維の形状は連続変数で定義しているため,連続変数の扱いが可能な粒子群最適化法(PSO)を多目的最適化問題に拡張し,本問題に適用する.これにより離散化する際の精度に影響されない,真にグローバルな最適解に近い非劣解集合の探索が可能となると予測できる.また,数値結果より得られた設計案より実際の試験片を作成し,その妥当性を検証する.さらに,得られた材料定数をもとに双安定性を有する複合材を数値計算により予測・設計し,ファイバー縫付機により実際に作成した試験片と,双安定性を有する臨界温度,両安定形状間での変位量,曲げ剛性,振動数,座屈強度などの種々の力学特性の比較を行う.
ほぼ計画通りに使用したが,研究の進捗の遅れに伴い消耗品の購入費が少額残った.
引続き消耗品の購入費として使用する.
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
日本機械学会論文集
巻: 81 ページ: WEB
10.1299/transjsme.14-00531
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/intelligent_design/